先日、業務オペレーションの方針や施策を検討するミーティングに出席したときのこと。みんなで日々の業務上の調整事項や指標となる数値をいかに改善するかについて真剣に議論、KPIをレビューし、市場動向を見極め、ユーザーニーズを探り、今悪い点をよくするためにどうするべきか、、。それはそれで重要なことだし何ら否定されるものでもありません。でも、なんか違うな、足りないな、と感じてしまった訳です。
なんでだろうと考えたとき、ふと、これって要するに改善と改良の話しかされてないからじゃないかと思った訳です。英語でいえばIMPROVEの話に終始しINNOVATIONの話がないというということかもしれません。
モノゴトを変えていく概念には、改善、改良、改革、革新などいろんな言葉があります。辞書的にいうと、
・改善:悪いところを改めてよくすること
・改良:不備な点や悪い点を(性質を変えない範囲で)改めてよくすること。
・改革:従来の制度・枠組みなどを改めてよりよいものにすること。
・革新:旧来の制度・組織・方法・習慣などを改めて新しくすること。
、、とありました。
改善と改良に一生懸命取り組めば、短期的には努力に応じた成果に結びつくかもしれません。でも、いろんなビジネス構造が変化している昨今、もっと大きな流れの中で、改善改良の効果が無効になってしまうこともありますよね。たとえばガラケーの機能をいくら改善しても、もはやiOSやAndroidのスマホの世界になったら付加価値も何もあったもんじゃありません。多かれ少なかれ日本のいろんな会社でそんなことが起こっていると思うのです。
10年ほど前、ある口の悪い電機メーカーの幹部が言っていました。「日本のテレビメーカは、50年間、テレビの画質向上しか技術進歩をさせてないんだよ。早晩、コモディティ化の中でビジネスとしてはダメになるだろうね。」と。それから10年、まさしくその通りになりました。ハイビジョンだ、液晶だ、有機ELだ、3Dだ、といっても、それは技術的に先進的なイノベーションがあったとしても、ユーザーからみたら画の改善改良でしかないと言えますものね。結局、大型高画質テレビの市場価値は数万円まで落ち込みました。
一方でAppleのiPhoneやiPadは技術的にはパソコンの延長線上にあるのかもしれないし、基盤部品の技術は日本にあるのかもしれません。でもユーザーからみたら、いままでに経験したことのない世界観を実現したところにイノベーションがあると思うわけです。結果、日本の電機メーカーの時価総額を全部集めても足元にも及ばないほど企業価値評価に差がついてしまいました。これからユーザーインターフェイスやコンテンツ、サービス連動のモデルをつくっていくのも結構つらそうです。
何を思うかといえば、上に立つリーダーが、将来を見据えたイノベーティブな指針を出していかないといけないなってことです。というか、それが主な仕事なんでしょうね。ユーザーからみた付加価値がどこにあるかを見極め、その付加価値を向上させる方法論を示していかないといけません。それはモノゴトの大小とは関係なくということが重要です。従来の業務上のKPIとは違う話になるかもしれません。リソースの使い方がまったく変わってしまうかもしれません。これまでの付加価値の一部が毀損してしまうかもしれません。でも、それをしていかなければ、いずれ日本のテレビメーカーのように、にっちもさっちもいかなくなってしまうのではないか、と思うわけです。
参考:
「改善」は「現状肯定の観点から改良する」、「改革」は「現状否定の観点から新しい姿にする」と定義づけられます。言い換えると、「改善」は「現状の延長線上で方法や手続きを変える」、そして「改革」は「将来志向から考え方を変革する」ということ。http://www.jmac.co.jp/wisdom/management/mg_04.php
参考:
「偉大な企業はすべてを正しく行うが故に失敗する」
「イノベーションのジレンマ
http://blogs.itmedia.co.jp/saito/2009/12/google20-9d35.html
http://eicolab.com.au/2008/12/01/the-innovation-interrupt/