2008年6月12日木曜日

【DVDを売るクリーニング店】

情報をメディアがコントロールできる時代は終わりました。疑り深くなった消費者はメディアが発信する情報の真偽を確かめる道具をもち、アクセスできる情報量は爆発的に増加しています。

不特定多数のコミュニティに容易にアクセスできる環境にあり、きっと口コミのほうに信頼を置いている人も増えていると思います。こんな環境の中で、金儲け的な”事業モデル”は、すぐに見透かされます。消費者は簡単に囲い込みなんかされたくないと思っているはずです。

そんな中で重要になってくるのは、発信者であるメディアが、どれだけ高い志をもっているか、どれだけ徹底的にユーザー満足や感動を与えようとする真摯な姿勢をもっているか、にあるのではないかと感じています。各種企画でも事業開発でも宣伝販促でも「そんなもんでいいじゃない」、、ではきっと共感は得るには至りません。お金の多寡ではなく「そこまで突き抜けてやるの?」、「そこまで考えてくれたの」ぐらいの徹底した取り組みの積み上げが共感と信頼に繋がっていく時代なのではないかと思います。

最近の傾向なのか、いくつかの本でそんなヒントになるようなエピソードを読みました。「明日の広告」という本にも、そんな徹底した話がたくさんのっていました。ほか「ビジネス脳を磨く」という本の中にも「DVDを売るクリーニング店」の面白いエピソードがありました。かいつまんで紹介します。

当たり前ですが、クリーニング店は普通DVDを売りません。しかし、そのクリーニング店の店主は映画が好きで、自分が感動した映画が、いかに素晴らしいを切々と書いて、その独自解説レポートを特典にしてDVDを正価で売ってみたそうです。すると、それに感動したお客さんが、次々と注文し、売上記録を更新しているという話です。 当たり前ですがクリーニング店のおやじは事業モデルの発想はなかったはずです。

そのクリ-ニング屋の別エピソードものっていました。あるときお客さんのシャツのボタンがとれていた。店主はお客様へのサービスの気持ちで、そのシャツのメーカーに電話で問い合わせ、ボタンを取り寄せようとしました。しかしメーカーは当初そっけない対応だったそうです。でも店主はあきらめず、今度はA4用紙にびっしり、なぜこんなことをしているのか、自分のクリーニング店の理念やこだわりを切々と書いて、是非協力いただけないか、という手紙を送ったそうです。

すると、その手紙を受け取ったメーカーが手紙に感動して社内で回覧、サンプルのボタンを探し出してクリーニング店に送ったとのこと。 すると今度は店主が感動して、そのことをお客さんへのDMで紹介しました。そのとたん、お客さんから「感動した」、「あんたは偉い」、「あなただったらやると思った」などの声やファックスが相次いだそうです。中には店主が電車に乗っていたら、すりよってきて「感動しました」と声をかけてくれるお客さんまでいたそうです。

当たり前ですがクリーニング店のおやじはお客様を囲い込もうという発想で行動した訳ではないはずです。

こんなところにビジネスの可能性がないでしょうか。損得計算をいくらやってもユーザー満足にも社会貢献にも繋がらないかもしれません。
感性とロジックのバランスをどのようにとっていくか、ここらへんの模索が重要だと思っています。

(参考)
「ビジネス脳を磨く」http://www.amazon.co.jp/dp/453226006X/
ビジネス脳を磨く (日経プレミアシリーズ 6)

「明日の広告」http://www.satonao.com/publish/ashita.html
明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045)

ほか、メガネドラックの店には「売上を競うな、サービスを競え」という額が掛けてあります。誤解をされては困るのですが、結構、共感する言葉です。
http://www.meganedrug.com/company/service.html


2008年3月21日金曜日

【「ミーハー心」と「プロ魂」】

■創造性の条件

ある人は「高い創造性を発揮し続けるクリエイターに共通する特徴は好奇心である」と言っています。( http://www.insightnow.jp/article/588 ) このサイトで紹介されている糸井重里さんも秋元康さんもキャラメルボックスの加藤昌史さんも「あれこれ面白いものを探して、なんにでも興味を示して、すぐに手を出してみる、何事も純粋な気持ちで受け止める」こと(ミーハーな姿勢)が創造性の源泉であると分析されてます。

ビームス社長、設楽洋さんの信条は「時代にフィットし続けるミーハーさ」と言っています。( http://www.ifs.co.jp/news/column_200403.html) ビームスは1976年、原宿で産声を上げて以来、一貫してミーハーな姿勢を貫いてきた。。。そして社長曰く「動いている今という時代の空気を読むこと。これはファッションに関わる人間にとっての必要条件と言っていい。「時代にミーハーであること」に自覚的なこと。時代の流れを読んで、半歩先駆けて新しいモノ・コトを提案していく。ファッション・マーケティングの基本的なる姿勢である」と。

その他、坂本竜馬やモーツァルトやスピルバーグの人物像を検索してみると、ミーハー的なエピソードが沢山あります。坂本竜馬は会う度にマイブームが変化していて、まわりが閉口した、、とか。西洋、輸入品、拳銃、革靴大好き、日本人で始めて新婚旅行とか。。

優れた文化も実は、ミーハー的文化ではないかと勘ぐっています。たとえば,江戸時代.世界史の中でも優れた教育水準と独創的な文化をつくった時代であり「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」とか「火事と喧嘩は江戸の華」な感性を持ちながら、歌舞伎、浮世絵、落語行楽、多様な食文化をつくった時代です。

こんなことを考えると創造性の条件として、ミーハーで旺盛な好奇心という気がしてきます。これこそが時代を創るクリエイターの素質なのではないか。

■「伝えるお仕事」の要件 = 「ミーハー心」と「プロ魂」

伝える仕事でもミーハーな好奇心は重要そうです。主にファッション業界で広報PRを専門に扱う「アタッシェ・ドゥ・プレス」という仕事をしている会社の代表である伊藤美恵さんの話があります。

情熱がなければ伝わらない!アタッシェ・ドゥ・プレスという仕事 (NB Online books)

この本の中で伊藤さんは、自らの「伝えるお仕事」=「ブランド戦略やPR戦略を考え実行する仕事」に必要とされる要件として次の3つのことをあげています。

 ・クリエイター、経営者、企業という送り手側の意識を完全に理解する
  「プロ魂」をもって取り組むこと
 ・一方で、世の中の気分を感じ、「ミーハー心」を抱く一人の消費者
  としての目線を決して失わないこと。
 ・そして、この送り手と受け手という相反する両極の立場を常に自分の
  中に同居させていること。

つまりは「プロ魂」を持ちながら、同時に「ミーハー心」を抱いた消費者であり続けることが「伝え手」の絶対条件であると言っています。

プロだからといって時代の一歩も二歩も先に行くことだけを目指しても、マーケットのニーズと乖離していれば自己満足で終わる。むしろ「ミーハー心」をもって、世の中の空気を感じながら、時代に寄り添い、半歩先のモノ・コトを提案していく力をつけていくことが重要である。

創造性の条件、伝え手としての条件としての「ミーハー心」と「プロ魂」の話でした。

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