2011年6月27日月曜日

【愛されるためのマーケティング戦略とは?】

将来ビジョンやミッションを考える社内ブレストをした中で、なりたい姿の表現として「嫌われてもいい、好かれるより、愛される会社になりたい!」というのがありました。

「会社として、いったい誰に対してコミュニケーションを取ろうとしているのか。漠然としたユーザーターゲットを想定して、"より多くのユーザーが満足いただけること"、"喜んでいただけそうなこと"、を提供していれば最大公約数的に支持が獲得できていく、、なんて時代は終わっているんではないのか」、という指摘だと思います。

インターネットによって流通する情報量は爆発的に増えています。ある調査によれば、99%以上、ほとんどの情報は消費されずにスルーされていくという状況になっているそうです。そんな中で、求められるのは、膨大な情報の中から、個々のユーザーにとって、ちょうどいいサイズの情報、心地いい情報を切り取り、気持ちを添えて提供することなのではないか、ということなんですね。

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マスマーケティング全盛の時代は、個々の嗜好なんて考えなくてもモノが売れました。大多数の人が必要な便利で機能的でデザインがいいものをつくって、よいイメージとともに訴求すれば販売に結びく、そんなマーケティング1.0の時代です。

しかしモノと情報が行き届き、消費者に選択の主導権が移行すると企業は、ターゲットを設定し、他社と差別化した商品を訴求し、ユーザーの満足を第一に考えるようになる。マーケティング2.0への移行です。

更に消費社会が成熟した現在、進行しているのは、それだけでは売れないマーケティング3.0の時代への移行です。消費者は、もはや買いたくない相手から商品を買おうと思わないし、同じものを買うならその活動や姿勢に共感できる会社から買おうという社会になってきているということなんですね。

前回の「"Start With Why"の話」では、そんなマーケティング3.0な世界の中で、企業はまず、「Whyを語ること」から始めるべきだという話を紹介しました。企業や商品、サービスの社会における存在価値・意義をまず相手に理解してもらうこと。それが出発点だと。 企業は自分の考えを積極的に発信しなければ生き残れない時代になったということなのかもしれません。

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smashmediaの河野武さんという人は「競争が熾烈な現代社会において、消費者に選ばれる商品、サービスは、いちばん安いか、いちばん性能がいいか、いちばん愛されているかのいずれかである」と言っています。

じゃあ愛されるためにどうすればいいんでしょうか? まずは自らの考え方を示し、消費者の言葉に真摯に耳を傾け、対話し、情熱ある行動や姿勢を継続的にとっていかなければいけません。その意味で、ソーシャルメディアとどのようにつきあっていくのかが、全ての企業にとって大きな課題になってくると思います。

ソーシャルメディア活用においては企業にとって都合の悪い、ネガティブな反応や炎上リスクにどう対処していくのかがしばし議論のポイントになってくると思います。 しかし、ある本に「大半の企業に炎上リスクはない、なぜなら、そこに存在することに気づいてさえもらえないからだ」という指摘もありました。 愛されるの反対は無関心だとはよく言われることですが、企業も、嫌われてもいないということは、そもそもの存在価値さえも認めれれてないということの同義なのかもしれません。 

ソーシャルメディアというのはユーザーが主導権を握っている場所です。そこへ企業が出て行って、愛されたいと思うなら、上から目線で通用するわけがありません。そもそもそもそも企業がマーケティングをするための場所ではないですからね。しかし企業も1ユーザーとして、向き合えば信頼や共感を勝ち取ることが可能な場所でもあるはずです。

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広告コンサルタントの高広伯彦さんという人は”B to Cのマーケティングは、B into Cのマーケティングへ”、という表現をしています。「B into C」、つまり消費者の中に入っていくということなんですね。

愛されること、共感されること、信頼されることは、一朝一夕で達成できるものではありません。でも、それが実現すると、企業にとっては大きな資産を手に入れることになります。ユーザーが理性や論理ではなく、情緒や感性で共感してくれる段階になれば、そのユーザーは自社のエバンジェリスト(伝道師)になってくれる可能性があるからです。
エバンジェリストは聞かれてもいないのに友人や知人に、その商品やサービスがいかに良いかをふれまわってくれます。周りを見渡せば一人や二人は、こっちが聞きもしないのに「こんどの●●はいいっすよ」って薦めてくる人がいますよね。

欧米でフェイスブックなどソーシャルメディアを活用したマーケティングが盛んになってきているのは、こんな背景もあるからなんですね。高度消費社会、感性消費社会において、自社が選ばれるためには、共感され、愛される必要がある。


参考
フェイスブックインパクト つながりが変える企業戦略
フェイスブック時代のオープン企業戦略
http://marketingis.jp/archives/854 最愛を目指せ(河野武)
http://www.advertimes.com/20101220/article3743/  B into Cのマーケティング(高広伯彦)
http://sem-labo.net/blog/2011/04/30/0529/

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2011年6月13日月曜日

【"Start With Why"の話】

サイモン・ シネックという人の「Start With Why」の話を教えてもらいました。まずは18分の講演(日本語字幕付)です。リーダーシップの話でもありビジネス戦略の話でもあります。http://www.ted.com/talks/lang/jpn/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action.html


誰でも自分が何をやっているのか(What)は分かっています。そして、どうやってやればいいか(How)も多くの人が考え行動します。でも何故をそれをやっているのか(Why)について、意識的に理解している人はとても少ないとシネックさんは言います。そしてビジネスをリードするためには自らの"Why"を知ることだと。

往々にして仕事をしていると、何をいつまでにやらなきゃいけないのか、どういう方法でやろうか、どうやって結果を出そうか、、という"What"と"How"で忙殺され(間が持ってしまい)、何のためにやっているのか"Why"を考えるのは後回し、或いは考えないで終わってしまいがちですよね。

しかし優れたリーダーは必ず"Why"を示すといいます。常に Why ⇒ How ⇒ What この順番で語るということです。

 
講演でとりあげられているAppleのジョブズも「ライフスタイルに革命を起こす。世の中を変える」という自らの'Why'を語った上で、高機能で美しく使いやすい(How) 製品やサービス(what)を世に送り出しています。だから人々が熱狂するのだと。

でも多くの企業は、こんな製品を出します。高性能で便利で、デザインがよくて、、(What)、高い技術力で可能になりました、ユーザーの望むことをリサーチして開発しました、、(how)で終わっています。なぜ、その製品やサービスを世に出そうと思ったのか、その志や価値や意義=Whyまできちんと語られていることは非常い少ない。 What ⇒ How 以上終わり!ということです。

現在の日本のごとく社会や消費行動が成熟してしまうと、人々は'Why'が明確でないものは、なかなか受け入れてもらえないということなんですね。だから企業も「Whyを語ること」から始めなければなりません。企業や商品、サービスの社会における存在価値・意義をまず相手に理解してもらうこと。それが出発点なんです。

先のマーケティング3.0についての投稿でもふれましたが、、
・マーケティング1.0:製品を販売すること
・マーケティング2.0:消費者を満足させ、保持すること
・マーケティング3.0:世界をより良い場所にすること
つまり3.0な”Why”が必要だということなんですね、

講演の最後でシネックさんは言います。組織においても個人においても、人々が主体的に行動するのは、皆が「そうしなければないらない」からでなく「そうしたい」からだと。「なぜ」から始める人こそが周り人を動かす。

「Why=なぜ』が全ての出発点。これを明確にすることから戦略をつくらなければいけないってことなんですね。


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参考:
・Insight Now!記事 「BIG WHY'から始めよ」 http://www.insightnow.jp/article/6353
・参考「優れたリーダーはなぜから始める」http://blog.mypeacefulfamily.com/2010/10/simon_sinek/
・その他参考(英語):
http://www.startwithwhy.com/
http://share.sayan.ee/2010/08/31/start-with-why/
http://www.hustream.com/blog/entry/want_to_know_why_simon_sinek_starts_with_why
http://montewashburn.wordpress.com/2011/05/23/simon-sinek-says-start-with-why/

ぐっとくる?選ばれる新法則」...感性消費の時代に突入した社会において「なぜ」の質問にどう答えられるか否かで全ては決まる。
・Appleの「Think Different」

2011年6月9日木曜日

【アメックスのリーダーシップ開発の話】

今週号(2011.6.6)の日経ビジネスではアメリカンエキスプレス社のリーダーシップ開発に関する記事が紹介されておりました。 往々にして「リーダーシップ」っていうと、人を統率し、場を仕切るための”人間力”とか”カリスマ性”なニオイもする言葉ですが、その考え方は、もはや古いイメージとなっています。今、リーダーシップというのは、社員全員が行うべき業務、果たすべき責任、学習すべきスキルとしてて意義づけるべきのようです。

そんな中、アメリカンエキスプレスは、リーダーシップとは何かを以下のように明確に定義し、ブレークダウンし、実践させている先進的な会社であるようです。

◆定義
アメックスは「株主、顧客、社員にとって優れた成果を生み出すこと」がリーダーシップと定義。

◆行動
そしてリーダーシップにより成果を生み出す行動を4つのカテゴリーに分類。
・ Create Our Future(未来を創造する)
・ Inspire Our People(人々を鼓舞する)
・ Excite Our Customers(顧客を感動させる)
・ Deliver on the Promise(約束を果たす)


◆行動特性(コンピテンシー)
そして4つのカテゴリーを更に具体化し①~⑧に細分化。
・ とは
①戦略性 ②創造力
 → 「未来を創造する」ために必要な行動
③関係構築力 ④コミュニケーション能力 ⑤人材育成能力
 → 「社員を鼓舞する」ために必要な行動
⑥顧客尊重
 → 「顧客を感動させる」ために必要な行動
⑦実行力 ⑧誠実さ、成熟度
 → 「約束を果たす」ために必要な行動

すごくよく整理されているなと感心します。

そして、それぞれの具体的な定義や行動例まで示されているそうです。例えば「①戦略性」を発揮するためには、、、
・広い視野をもって戦略を計画や目標に明確に結びつける。
・競合他社の事業活動や市場動向に関する深い知識を示す。
・重要なビジネスドライバーを理解する。
・財務情報およびそのための企業情報や市場情報を用いてビジネスチャンスを見極める。 

こうやって定義づけていくことで、各社員は、自分のリーダーシップで、どの能力、スキルが不十分なのかを意識できるようになります。それを会社として研修や評価や実際の業務を通じて高めていくシステムをつくっているということなんですね。

リーダーっていうのは自らの強みを生かしながら、真摯さを持ちながら、こういった能力を発揮し、成果を出していくべきものだと思います。

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リーダーシップについて昨今、「もしドラ」で話題のドラッカーも次のようなことを言っています。

  「リーダーシップは資質ではなく仕事である」 

「リーダーシップとは人を引きつけることではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものはセールスマンシップにすぎない。」


http://diamond.jp/articles/-/1906
http://allabout.co.jp/gm/gc/377805/
http://www.nrf.com/Attachments.asp?id=20443 (パワーポイント)

2011年6月3日金曜日

【マーケティング3.0の話】

フィリップコトラーさんという著名が学者が去年「マーケティング3.0」という本を出しました。内容は省略ですが、その違いの抜粋を表にしたのが以下です。



◆マーケティング1.0
「いいものをつくれば売れるのよ」というアプローチです。音楽やエンターテイメントでいえば、より多くの人が喜ぶ、いい楽曲、いいアーティスト、いいコンテンツさえつくればマスは反応するし、人は集まるし、たくさん売れるでしょ、という段階といいましょうか。マスメディアを通じた「幸せ」や「豊かさ」の共同幻想が機能していた時代は、このマーケティングが有効だったと思います。

◆マーケティング2.0
インターネットを始めとする情報技術の発展によって、人々は、マスメディアの情報以外に膨大な情報にアクセスできる環境が整いました。企業側の都合や論理は通用しなくなってきます。そこで徹底した消費者志向のものづくり、サービス開発へのシフトが浮上していきました。ユーザーをターゲティングし、自らのポジショニングを考え、他と差別化することによって競争に勝っていくことが必要になりました。お客様の満足のために、One to Oneの対応をする。これがマーケティング2.0。 アーティストでいえばファンが求めているものを届ける、そうやって支持を得ていくというアプローチなのかとも思います。

◆マーケティング3.0
そして時代は3.0。Facebookで政治が変わり革命が起こる時代になりました。個々人は発信する力を持ち、相互につながることが可能になりました。一塊の「マス」は消滅し、個人の集合体としての「ソーシャルネットワーク」が立ち上がります。情報の流れが大きく変化していこうとしています。

上記の表にもある通り、マーケティング3.0では自らのミッションと存在意義を発信しユーザーからの共感を得ることがアプローチ手法です。製品開発やコミュニケーションに消費者を参加させ、一緒にものごとを創っていくということなんですね。

◆LADY GAGAのマーケティング3.0
前回ふれたLADY GAGAはまさしく、その3.0なアプローチと言えると思います。ソーシャルメディアをフル活用し、ファンと密接なコミュニケーションを図っています。

例えば新曲 ”Edge of glory”では、ファンが歌い踊ってる動画をYouTubeにアップし始めたのを見たGagaが「映像をつくるから、みんなのもっとたくさんの動画をちょうだい」とUP。数分後に数100以上のビデオが集まり、投稿したユーザーは彼女のPVの一部に出演。



GAGAはこういった圧倒的なソーシャルパワーで企業やレーベルを超える影響力を獲得しています。

◆AKB48のマーケティング3.0
AKBも劇場や握手会でダイレクトコミュニケーション。総選挙でファンを巻き込んだファンがプロデュースする形をつくっています。まさしくマーケティング3.0における「企業の製品開発やコミュニケーションに消費者を参加させる」、「多数対多数の協働」のコンセプトを実現させていると言えますよね。

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110531/ent11053110000007-n1.htm



参考:マーケティング3.0
http://blog.tokuriki.com/2011/01/30.html
http://www.mindreading.jp/blog/archives/201101/2011-01-08T0226.html
http://blogs.itmedia.co.jp/saito/2010/11/30-cb07.html