2011年11月28日月曜日

【モノからコトへ】

「これからの音楽ビジネスを考えたとき、やっぱり、もう音楽そのもので儲けるってのには限界があるんじゃないかなぁ」。 これは音楽業界の見識ある方から最近、お聞きした言葉です。確かにCD市場が縮小し、配信市場も頭打ち、少子高齢化が進む日本の中で、音楽ソフト市場がもう一度、成長軌道に回復するというシナリオはなかなか描きにくい状況です。
そんな中で次はアイドルだ、アニソンだ、K-POPだ、、というジャンルの問題だけを語っていても仕方ないし、これからはライブだ物販だと、次の「音楽の売りモノ」は何か、という議論だけをしていても駄目なのかもしれません。

一方で”音楽コンテンツビジネス”以外に目を向けると、音楽をコアにしながら成功しているビジネスや企画はたくさんありますよね。
・Appleの快進撃のきっかけは音楽をコアにしたデバイスとWEBサービスでした。
・かつてmyspaceは音楽を軸にして巨大なSNSに成長しました。
・GoogleもついにGoogle Musicという音楽サービスを立ち上げ話題になっています。
・そういえばヒット映画「モテキ」も音楽なしでは成立しない映画でした。

音楽コンテンツ業界は厳しさを増していますが、音楽をコアにしたビジネスは依然大きなポテンシャルをもっているように思います。

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こう考えていくと、
「音楽をモノとして売る商売形態は縮小しているけど、音楽でコトを起こす商売形態には成長余地がある」ってことなんじゃないか、と。

音楽ビジネスをCDやアーティストグッズなど音楽に関連する「モノ」を売るコンテンツビジネスとして捉えると、その市場は限定されてしまうように思います。ライブイベントも単にアーティストの生演奏を聴かせてその対価としてチケット代収入を得る場として捉えると単発的な「モノ」的な感じがします。

一方でAKBのようにCDを一つのツールとしながら投票権、応援料、体験料への対価として、モノからコトへ枠組みをかえたモデルは盛況です。これはもはや”音楽コンテンツビジネス”ではないのかもしれません。
ap bankは「環境プロジェクトなどへの融資をはじめ持続可能な社会を創るためのさまざまな活動を行う組織」であり、「ap bank fes」はその為の手段と位置づけています。ロジックとしては音楽フェスをやるから社会貢献をするということではないんですね。

同じCD販売でも楽曲データというモノを買うのか、握手券というコトを買うのか、によって意味合いが違います。
同じライブでも「音楽演奏会」に参加するのか、「社会貢献活動支援」というコトに参加するのかで意味合いが違います。
音楽ニュースといっても、楽曲リリース情報と、例えば被災地支援のライブでのアーティストの思いを伝えることは全く意味合いが違いますよね。

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震災の影響も加わり、物質的な価値観から精神的な価値観に社会がシフトしています。マーケティング3.0、スペンドシフト、ソーシャルシフト、、が進む中で、単に「モノが欲しい」という欲求は相対的に減っていくように思います。それよりも「自分にとって意味がある」、「自分が価値があると思う」コトに対してお金を払う世の中になっていく。だからこそ音楽を使って新しい価値を生み出す、価値あるコトにフォーカスする必要がるのではないかと。つまり、、

「モノとして音楽を売る」のではなく「音楽でコトを起こす」

「モノからコトへ」の発想を転換することによって広がる可能性があるのではないか。今、人々が潜在的に強く求めていること、知りたいことは単なるクオリティの高い楽曲や最新音楽情報なのではなく、音楽によって巻き起こるコトのほうなんではないのか、、。
そんなことを思った次第なのです。

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2011年11月10日木曜日

【「ネクスト・ソサエティ」】

「ネクスト・ソサエティ」といドラッカーさんの本があります。2001年の9.11の前に書かれ、まだFacebook、YouTubeもかげも形もなかった時代に発行された本です。

10年前に読んだことが、だんだんと現実となって表れてきているように感じます。やっぱりドラッカーの洞察力、予言力はすごいです。


今でこそ「ソーシャル」って言葉がクローズアップされ、ビジネスの世界でもソーシャルイノベーション、社会貢献が重要視されてきていますが、ドラッカーさんは そんなことは、とうの昔にお見通しでした。 "ITとインターネットによって社会が変わる"。 みんなITだ、インンターネットだ、なんだって騒いでるけど、本当に重要なのは社会(ソサエティ)なんだよと、、、。 ソーシャルの重要性を既に見通していたんですね。


ドラッカーは本を出版した1991年当時、進行しつつあった「IT革命」はやがて「産業革命」のごとく技術を超えて世界を変えていくだろう予言しました。
本を参考に「産業革命」の進行と「IT革命」の進行を対比してみます。

◆1760年 蒸気機関発明から始まった産業革命
イギリス産業革命は1760年から1830年まで70年間続きました。
・ まず蒸気機関が発明され、生産プロセスの大変化が起こります。
・ 50年後の1810年頃には蒸気を使った鉄道が発明されます。
  技術革新がインフラ革新を呼んだわけです。
・ そして鉄道網の整備が次に郵便制度、電報、新聞などを生み出します。
  これによる情報流通インフラ発展による産業の発展は銀行や公務員制度に
  つながっていきます。
・ 人々の生活が変わっていきます。工場勤労者層を増えて、農業や家内制
  手工業は崩壊します。

、、、蒸気機関発明から100年かけて社会が変わっていった訳です。

◆1940年 コンピューター発明から始まったIT革命 
・ 蒸気機関の発明にあたるのが1940年のコンピューターの発明です。
・ 鉄道の始まりが1990年のインターネット。丁度50年後です。
・ 鉄道網の整備がブロードバンドを前提にしたeコマースです。
  それが2000年ぐらいの話でした。
・ そして2011年、インターネットをベースとしたコミュニティインフラが普及。
  エジプトではFacebookインフラを使った革命が起こるまでに至ります。

、、、、コンピューターの発明から70年で社会が大きく変わりはじめたということだと思います。

鉄道の整備が始まった段階にも鉄道バブルがあったそうですが、インターネットの整備が始まった段階でもITバブルがありました。ITバブルは大昔に弾けましたが本当の大変動はこれからということです。

1991年のドラッカーは言います。

「蒸気機関や鉄道は、それまでの家内制手工業でやっていたことや、馬車でやっていたプロセスを、置き換えたに過ぎない。同じようにコンピューターや今のeコマースは、会計計算や在庫管理、商品受発注プロセスをPC上に置き換えたに過ぎない。まだ何の本質も変化していない。
印刷技術発達によるキリスト教思想の浸透、それによる社会、制度、理念、思想の大変化みたいな本質的変化はほとんど起こっていない。」

「かなりの確率をもって予測できることがある。それは今後20年間に、相当数の新産業が生まれるであろうことである。」

そして、これまた「確実に」 これから”社会、制度、理念、思想が大きく変化していく”と予言しています。 既存の枠組みを置き換えているだけでは今後のブレークスルーはないってことですね。

昨今の「ソーシャルシフト」っていうのが、その大きな変化の始まりの一つのキーワードのような気がします。今後10年で何が起こってくるのかわかりませんが、きっと産業レベル、社会レベルでの変化が起こってくるんだろうなと思います。


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2011年11月3日木曜日

【美魔女ブームと女子大生ブームの関連性】

前回9月投稿から2ヶ月たってしまいました。この2ヶ月でジョブズが亡くなってしまい、タイでは大洪水に見舞われ、ギリシャは財政破綻、日本では野田内閣が発足しつつ、株式市場は9000円を割り込んだまま、為替は70円台、日本のテレビメーカーも軒並み業績悪化です。

そんな決して明るい世の中でない中で、最近、案の定出てきた「美魔女ブーム」です。一昨日11月1日には国民的美魔女コンテストが開催され45歳の女性がグランプリ、芸能界デビューらしいです。ファッション雑誌に仕掛けられたとは言え、マスコミなどで盛り上がるということは、ここらへんにきっと消費のニーズがあるということですよね。

だいたいこの「美魔女」年齢層っていうのがくせものです。例えば今回の美魔女グランプリの方は45歳、1966年生まれです。この年代の方々は20歳前後のとき、80年代初頭の「女子大生ブーム」をつくりだし、企業の大量採用期に入社し、就職後はバブル期のOLとして90年代前半まで活躍し「ジュリアナブーム」等を先導しました。30代も後半に差し掛かった2004年頃には一部「負け犬ブーム」もありましたが、40代を迎える2006年〜2008年には「アラフォー」に突入します。(一部の親は「モンスターペアレント」と化したようですが)。それから3年、今度は40代を積極的に楽しむ「美魔女」ときました。

要するにみんな同じ方々(属にいうバブル世代)なのですね。やっぱり指向性の本質は年齢ではなく年代によって形作られるところが大きいようです。

このブームをつくりだしている1965年〜1969年生まれぐらいの層は、実は日本の人口構成上のボリュームゾーン(団塊ジュニア1971年〜1974年生まれ)ではなく、その上の年齢層です。なぜかここが消費を牽引し、ブームを作りだし、いい思い?をしているんですね。
一方、その下の団塊ジュニア層は属に「貧乏くじ世代」「不運の世代」と呼ばれているようです。人口が多いがゆえの受験戦争、なのに成人する頃にはバブルが崩壊し就職氷河期に突入、就職しても賃金削減、可処分所得減少に見舞われました。

下の人口構成グラフでもわかるとおり、現在の日本の最大ボリュームゾーンは団塊の世代(1947年〜1949年生まれ)62〜64歳の方々です。この層も日本の消費や文化を牽引してきた世代です。ここが一斉に定年リタイアの時期を迎え、シニアマーケットが新たな局面を迎えると想定されています。

そしてその次の牽引役がバブル世代。きっとこれからも、50代になっても60代になって○○ブームを作りだすことは間違えありません。

マーケティングを考えるときの一つの考え方として、このトレンドをつくる層にターゲットを絞ってプランニングするというのも有効だと思います。年齢別による指向性より年代による指向性のが分析しやすそうですしね。

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