2011年5月29日日曜日

【音楽ビジネスはいずこへ?】

前回はFacebook, TwitterなどSNSサービスやYouTube, Ustreamを始めとする映像配信サービス、その他、課金決済サービスを始め、様々なインフラが オープンでグローバルなプラットフォームとして整備が進んでいるという話をしました。そして、そんなプラットフォームを使って、企業だけに限らず、個人やアーティストも自ら発信し、ユーザーと直接コミュニケーションを図ることも可能になりました。

◆レディー・ガガのビジネスモデル

そんな中、先日「レディー・ガガに学ぶビジネス戦略」って記事が発信されてました。いろんなソーシャルメディアを縦横無尽に活用して、自らを発信し続けているLADY GAGAについてドイツのビジネススクールの教授が、その戦略に注目し、これは企業の戦略にも使えるという指摘をしているという話でした。LADY GAGAはFacebookで36百万人のファン。Twitterで10百万人のフォロワー。YouTubeのオフィシャルページで再生回数も億単位。へたなメディアや企業より影響力があるのは確実です。こうなってくるとレーベルやメディアに頼らず自分主導でいろんなビジネス展開ができてしまいますからね。
http://jp.reuters.com/article/entertainmentNews/idJPJAPAN-21376320110526

◆レベッカ・ブラックのヒット

一方、LADY GAGAとは真逆な素人が、ソーシャルメディアから新しい形のヒットを作り出したという話を聞きました。音楽やダンスが好きだった13歳の娘レベッカの為に母親がロスでレコーディングと音楽ビデオの制作を30万円ぐらいで請け負う会社に制作を依頼。結果、出来上がった曲「フライデー」は2月にYouTubeに投稿され、3月に火がつきます。
でも話題になった原因は「史上最低な曲」という酷評。聴いてみると確かに酷い曲です。それでも再生回数は1億5000万を超えてます。
http://www.youtube.com/watch?v=vH--AdCVUek(日本語訳詞つき) 
参考ブログ:http://yogakutengoku.blog135.fc2.com/blog-date-20110418.html

これから日本でもきっと、ソーシャルメディア上から、こういうアーティスト?がでてくるんだろうなと想像します。カリスマな大物だけでなく、酷いアマチュアから、一部のコミュニティにだけで成立するマイクロな音楽ジャンルやアーティストまで。

◆2010年の日本の音楽市場実績

そんな中で今の日本の音楽市場の状況については、4月に日本レコード協会が「日本のレコード産業2011」ってレポートを出してます。
http://www.riaj.or.jp/issue/industry/pdf/RIAJ2011.pdf

音楽ソフト市場全体としてみると、2007年まではCDの落ち込みを音楽配信でカバーと言えてましたが、2008年から市場全体でダウントレンドに入りました。


















◆要するにAKB48と嵐

CDシングルは前年比+10%ぐらいになっているようですが、これはAKBと嵐の効果が大きく。AKBと嵐を除くと、CDシングル市場もマイナスのようです。
2010年のオリコン年間シングルランキングトップ10が以下です。見事です。

1位 : 95.4万枚 … AKB48「Beginner」
2位 : 71.3万枚 … AKB48「ヘビーローテーション」
3位 : 69.9万枚 … 嵐「Troublemaker」
4位 : 69.6万枚 … 嵐「Monster」
5位 : 66.0万枚 … AKB48「ポニーテールとシュシュ」
6位 : 65.6万枚 … 嵐「果てない空」
7位 : 62.0万枚 … 嵐「Lφve Rainbow」
8位 : 59.7万枚 … AKB48「チャンスの順番」
9位 : 59.1万枚 … 嵐「Dear Snow」
10位 : 51.6万枚 … 嵐「To be free」


参考:
http://blog.livedoor.jp/ustan777/archives/51776739.html
http://www.oricon.co.jp/music/special/2010/musicrank1220/index02.html

そんなAKB48のニューシングル『Everyday カチューシャ』は、既に165万枚出荷だそうですね。なんでも「AKB選抜総選挙」の投票用カードが封入されていて5500枚購入した強者もいるとのこと。もはや「楽曲」を買っている訳じゃないんですね。

-*-*-*-*-*-
音楽ビジネスはこれからどこに向かうんだろうかと思います。アメリカとか海外の事例をみていくと、次に日本が向かうトレンドもみえてくるかもしれません。


.

2011年5月24日火曜日

【プラットフォームとモジュールの話】

IT用語として使われてきたプラットフォームとかモジュールとかいう言葉がビジネス全般において使われるようになってきました。先日、あるイベントで佐々木俊尚さんのお話を聞く機会に、この「プラットフォームとモジュール」が一つのビジネス上のキーワードになっていました。メディアビジネスにおいても、このプラットフォームとどう向き合い、活用するかということが重要になってきていると思います。

◆プラットフォーム
そもそもプラットフォームって何か?調べると「コンピュータにおいて、ソフトウェアが動作するための土台(基盤)として機能する部分のこと」と書いてあります。例えばExcelやWordというアプリケーションはWindowsなどのプラットフォーム上で動いていると言えますよね。

しかしプラットフォームはあらゆるビジネス事象で頻繁に使われる言葉になりました。自動車産業においては最も基本となるシャシー部分がプラットフォームで、そこから部品やモジュールを組み合わせていろんな車種を作り出しています。AndroidはスマートフォンやタブレットPCなどターゲットとして開発されたプラットフォームだし、YouTubeは動画配信のプラットフォームです。

少し前まで放送や新聞などのメディアビジネスはこういったプラットフォーム的な考え方とは別の垂直統合型のビジネスモデルで栄えてきました。自ら番組や記事といったコンテンツをつくり、紙面や番組表として編成し、電波を流す鉄塔や新聞販売店などの流通までを一気通貫で抱えてトータルで収益を確保していた訳ですよね。

しかし放送においてはかなり前から配信、課金、マーケティングとしてスカパーのようなプラットフォームが成立し垂直統合型ではない形が存在し始めました。映像コンテンツはテレビでなくてもYouTubeやUstreamという配信プラットフォーム上で見ることができるようになりました。

ニュースについても今や新聞をとらなくてもyahooニュースやGoogleでも知ることができます。ケータイの世界でも少し前までキャリア毎にがi-modeやez webなどでサービスやコンテンツ、課金インフラを支配していました。しかし今やキャリア共通のAndroidやiTunesというプラットフォーム上でアプリが動き課金ができる環境が整備されつつあります。

SNSの世界でもTwitterやFacebookを始めとしたプレイヤーがプラットフォーム化しています。Twitterのつながりを前提としてfoursquareという位置情報サービスが成立したり、Facebookを前提としてソーシャルアプリ、ソーシャルゲームなどが次々と生まれています。

つまり、一昔前のコンテンツから伝送路までを一気通貫で抱えてユーザーを囲い込むクローズな垂直統合型のモデルの多くは崩壊し始め、オープンなプラットフォームを活用した新しいビジネス形態が増えつつあるということだと思います。

そして、このプラットフォームのトレンドがオープン化とグローバル化だと思います。AndroidもTwitterもFacebookもYouTubeもUstreamも、全て全世界で共通に普及したプラットフォームで、基本的に無償でオープンに解放しています。

これからのメディアビジネスは、きっとこういったオープングローバルプラットフォーム上で、どういう付加価値を提供できるかというところに競争ルールがシフトしていくトレンドだと思います。

◆モジュール
そこで出てくるのがモジュールです。モジュールとは「ハードウェアやソフトウェアにおける、ひとまとまりの機能・要素のことである」と書かれています。FacebookやMixiなどをプラットフォームにして、そこでサードパーティの開発者が提供するアプリやゲームはモジュールと呼べます。アメリカの音楽業界はYouTubeと争うことをやめてYouTubeプラットフォームにしてVEVOというミュージックビデオ配信サービスを開始。これもモジュールです。

コンテンツ制作から流通までを押さえることによって成立していた垂直統合型のビジネスは、オープングローバルプラットフォーム化で収益性を損うことになっていくと想像します。

音楽業界でいえば、楽曲を制作し、CDに固定化し、販売流通網を押さえることによって獲得してきた付加価値の総体が解体され始めます。既にCDの部分がデータ化され、流通網はインターネット、iTunesなどのプラットフォームに押さえられつつあります。
放送も新聞も音楽も、どこの業界も自らネット上でも流通網を確保する動きをとっていますが、オープングローバルプラットフォームの勢いの中で、どこまで独自の領地を確保できるのかは難しい状況に至る可能性があります。


佐々木俊尚さんも言ってましたが、今後、メディアビジネスで新たなビジネスチャンスを探るとき、オープングローバルプラットフォームをうまく活用して、他がまねできないモジュールとして付加価値を出していくことが、一つの生き方であると思います。 
従来のように、無闇に大きく儲けることは困難になる可能性があります。どっかに関所をつくって過度に儲けることはできなくなるということかもしれません。でも食っていけるやり方はあると僕は思います。ここらへん、また考えていきます。


参考)
http://www.facebook.com/SAKAIjyuku
http://blog.goo.ne.jp/denmipapa/e/151665a33282b74ef03e854eaba959f7?fm=rss
http://khayashida.jugem.jp/?eid=150
http://ja.wikipedia.org/wiki/VEVO

2011年5月18日水曜日

【理念やビジョン、航海の例え】

たいていの会社はHP等で理念やビジョンやミッションを掲げています。しかし、じゃあ「そもそもビジョンって何?」。「理念とビジョンは何が違うの?」、「戦略との関係性は?」等々。わかったつもりになっていても結構混乱するところです。実は統一した定義があるわけでもなく、それぞれの流派で、定義づけて議論するしかないとこでもあります。

そんな中、よくある例えで、会社を大海原を航海する船にみたてて説明すると、、というのがあります。


◆経営理念、信条

「経営理念」は航海における「北極星」に例えられます。

まずもって企業というのは社会的存在なので、その目的、使命がなければ存在の意義がありません。逆に言えば「目的と使命をもたない団体は企業ではない」ということです。
「何を信じて、何を究極的な目的として生きているのか」を出発点として企業は活動を開始します。そういった意味で進むべき方向を示す北極星が必要です。それが経営理念ということです。

◆ビジョン

「ビジョン」というのは航海におけいて次に「目指すべき島」に例えられます。

北極星の方向に進むにしても、じゃあ当面、どこをゴールにして航海するのかがないと、判断基準があいまいになり、アクションに結びつきません。具体的な到達地点が明らかにあれば、成功イメージ、そこに至るプロセスが共有できます。 
ビジョンが明確であれば、それを達成するために乗組員はそれぞれ、自らの使命を考えることができます。理念をふまえビジョン達成のためになすべきこと、それがミッションということもできます。


◆戦略

「戦略」は、「目指すべき島」への航路、方法論ということができます。

目指すべき島を決めても、そこに到達する手段は多様な選択肢があるはずです。
天候や海流の状況によっても航路が変わるでしょうし。海賊に出くわすかもしれません。そういった外部環境を分析する必要があります。また船の性能、燃料や食料の状況、乗組員の体力やスキルなど内部分析もふまえないといけません。 
多様な選択肢の中から、最善と思われる判断をチョイスしないといけないということです。事業環境と内部リソースをふまえ、最適な判断をしていくこと、それが戦略です。

-*-*-*-
理念やビジョンは全ての出発点です。それを考えたからといって、売上や利益にすぐ結びつくわけではありません。しかし、どっちの方角に行くかも決めず、当面のゴール地点も決めず、とにかく出航だ、というほど危険な話はないですよね。南極に行きたい人と北極に行きたい人は同じ船に乗ってはいけないし、ゴール到達に必要な人員や物資がわからないまま出航して餓死したくありません。ゴールを共有しないままで一緒に働いていると、いろんな判断でズレが生じてきます。作業の本当の意味がわかならければモチベーションは高まりません。

理念やビジョンを握った上で、次は会社を構成する個々人のミッション設定とコミットメントをとることが重要になります。理念やビジョンがあいまいだと、コミットメントもあいまいになります。個々人が自分の都合のいいコミットをして、成果を主張されても困りますものね。

「この嵐の中で、そんな一生懸命、甲板掃除されてもな」とか。
「僕は北じゃないと思ってるんですよね」と言われてもね。
「だったら降りろよ」ってことですものね。

2011年5月14日土曜日

【ヒアリングの威力の話】

先日、会社の営業研修のオブザーブをしてまいりました。
今求められる基本となる営業スキルはなんのか、応用するにも、まずは基本がわからないとね、ということです。

世の中、それこそ商品情報は下手をすればお客さんのほうが詳しいこともある時代。マスメディアの情報やブランド訴求もなかなか伝わりません。
個々人の価値感も多様化し、商品、サービスそのものの価値というより、その商品やサービスによって提供される機能、体験、思いのほうに重きがおかれる時代です。

そん中で「価値」をという形のないものを売らなければいけない営業は、どのようなスキルが必要なのか。どう行動すべきなのか?
もはや、とにかく足でかせぐということでもないでしょうし、プレゼンをうまくやれば説得できるということでもないですよね。

◆ヒアリングの力

そこで重要になってくるのが「ヒアリング」。相手の潜在、顕在のニーズをいかに引き出し、Win-Winとなる提案ができ、パートナーとしての信頼関係を勝ち取れるか、そこに「ヒアリング」のスキルが重要となってくるという話です。
昨今、指導もコーチングという方法がクローズアップされていますよね。画一的な仕事形態の中で、マニュアル通りに進めればいい段階を過ぎ、業務が専門化、個別化する中では、「答えは各個人の中にある」という想定に立ったほうがリーズナブルです。だからヒアリングによって、それを答えをあぶり出す、気づかせるということが有効だということです。

人間は、基本、聞きたいことしか聞かない、頭に入れない。経験上、これは間違えないと思っています。どんなに素晴らしいプレゼンを用意しても、どんなに説得力ある話でも、相手は聞きたい話しか耳に入れないものだと認識しています。一番相手に響くこと、入ることは、相手がそのとき潜在的に思っていること、考え方、アイデアとシンクロしたときだと思います。そうすると「いや、その通りですね!」ということになるんですね。

「ヒアリング」は、その相手が潜在的に思っている考え方を思考の表層にもってこさせる力があるということです。営業においても、プレゼンの前にヒアリングが重要というのは、ここにあります。

◆営業におけるヒアリング

プレゼンでは、相手が聞きたいことを言わないといけません。なので、まず相手の聞きたいことを探る、それがヒアリングです。

まず「営業マン」なんてのは、そもそもお客の立場からみれば面倒くさい存在です。突然、どっかの営業マンから電話がかかってきて、「実はおすすめの、いい話があるんです」と切り出されても、「今、忙しいので」で終わらせたくなりますよね。営業マンから電話っていった瞬間にまずは”警戒”です。一方的なセールスに対して、人は基本「NO」を前提に対応するといいます。
普通にアポをとって相手にプレゼンする場合でも同じですよね。「是非、御社のお役に立ちたいです。我々はこういう素晴らしい取り組みをしています。興味ありませんか」っていってプレゼン資料を渡されても、「ふーん」で終わる可能性が高いです。「是非、御社のお悩みやニーズを聞かせてください」って漠然と聞かれても。「そういわれても、特にねぇ」となります。

しかし、いい質問をしてくると、相手のその感じがかわってくる可能性があります。相手が何を聞いてくるかで、相手の知識レベル、提案レベルはだいたいわかりますものね。

◆まず情報収集と観察

なので、いいヒアリング、いい質問というのは、相手のことをよく知った上で、仮説にもとづいて、するものだということです。
もちろん、初対面で、相手のことをよく知ることはできません。だから会う前に、知る事ができる情報をできるだけ頭にいれる。ホームページや本、相手の会社の雰囲気、昨今ではTwitterやFacebookで本人の発言やプロフィールまである程度把握できてしまします。その上で、相手の考え方や興味について仮説を立てて、それを質問によって探りながら、相手の潜在的なニーズに辿りついていく。
相手も潜在的にニーズに近いところを探られているうちに、自分でもアイデアがひらめく、ニーズに気づく、ということになるかもしれません。

その後で、「それだったら、こういう提案ができますよ」と提案、プレゼンする。
相手が潜在的に聞きたいことを提案すれば、「なるほど、おもしろいね」となるはずです。信頼にもつながるかもしれません。


◆住宅展示場での営業の事例


ここでも営業マンがヒアリングでまず知るべきは家に対する「お客様の夢やビジョン、問題」ということです。

住宅展示場を訪れる多くの人が感じるのは、「どのメーカーもモデルハウスは素晴らしいし、営業の人が特徴や性能を詳しく説明してくれる。しかし、私が新しい家でどんな暮らしをしたいのか聞いてくれる人はめったにいない。」ということ。
だから営業マンはあえてお客様と「商品以外の話」をできるようにするべきだということです。商品に直接関係のない話は、たとえそれがお客様の趣味やライフスタイルの話であっても「世間話」や「雑談」ととらえて切り捨ててしまいがち。でも、その雑談の中にお客様の関心事、ニーズの芽がある。という話です。http://stc.cicombrains.com/jirei/08.html


こんな営業のことを「高関与営業」というらしいです。それは、顧客への貢献を実現する営業ということ。自社の商品やサービスをいかにし て購入してもらうかというセールスの立場から一歩進んで、顧客の立場になって物事を考え、深く理解 し、どうすれば顧客が抱えている問題を解決できるのかという視点に立って営業をするということらしいです。

2011年5月10日火曜日

【企業にとっての社会貢献】

震災のことがあって、日本においても「社会貢献のあり方」ということが、より現実的で緊急な問題となっています。しかし、社会貢献意識の高まり自体は、震災前からありました。それがより加速されたということではないかと思います。

企業にとってもビジョンやミッションを考える上で、社会に対してどういう貢献をするのか、という基本理念がなければ戦略に軸がうまれません。そういった観点からも、企業が社会貢献をどう考えるのかは重要な課題だと思います。

-*-*-*-*-*-

世界に目を向けると、もっと大きな流れとして社会貢献が位置づけられています。アメリカでは、2010年大学生の就職人気ランキングで、NPOが一位になったそうです。(TFA)Teach for Americaというところです。GoogleやAppleを差し置いての一位。 http://www.teachforamerica.org/
Room to Readを設立したジョンウッドはマイクロソフトの重役を引退し、NPOに心血を注ぎ、スタバの店舗展開を超えるスピードで図書館や教育機関を途上国に展開しているそうです。http://www.roomtoread.jp/

世の中には多くの社会問題があります。今現在、進行中の日本で震災によって引き起こされたあらゆる問題ももちろん、世界中で治安、失業、貧困、環境、教育、いじめなど社会問題が発生してます。それぞれ解決が急を要することばかりです。
これをなんとかしたい、問題を解決していきたい、、そのために実際に行動し、ソーシャルイノベーションを起こす、「世界を変える」ということを実行し成果を出している人や団体があるということです。 (社会貢献によって)世界を変えるということは、もはや夢想家のスローガンではなく、現実的な確信となっているといいます。

2009年調査によると日本の高校生の86%が「この国には希望がない」と感じていると答えたそうです。  村上龍さんは小説の中で「この国には何でもある。本当にいろいろなものがある。だが、希望だけがない」と書いていました。 そして希望とは「将来が現在より良いものになるだろう、そういった確信に近い思いが希望だ」といっています。「これまで日本は希望より安心を優先されてきた」。でも震災を契機に、これから日本がどう変わっていけるかが問われていると思います。
社会貢献とは希望を生み出す仕事ということかもしれません。

利益の概念も変わりつつあるようです。 これまでは利益とはお金のことでした。でも最近は「社会的利益」という考え方がでてきて、何か事業を行ったことで、たとえ金銭的な利益がでなくても、それで世の中がよくなれば社会的利益が出たという考え方も出てきています。

じゃあ社会貢献すれば儲けなくてもいいのか? それも全く違います。著名な学者マイケルポーターは「社会貢献したほうが企業は儲かる」と断言しました。 社会貢献したほうが社員のモチベーションが上がることも結論づけられています。いまやマーケティング戦略さえも社会貢献と無関係ではいられない時代です。

更に企業による社会貢献は大きく考え方が進化しています。

・その昔、企業による社会貢献は「慈善の時代」でした。企業に求めら
れていたのはNPOへの寄付。カネを出すだけ。
・これが「本業を通じた、本業を活かした貢献の時代」に移ります。
商品を売る行為に寄付を組み込んだ仕組みとか電通のクリエイターが
パンフづくりを指導するとか、IT技術者がソーシャルメディアの活用法
を    コンサルするとか。
・そして今は「本業と社会貢献が統合する時代」に入りました。これから
の企業は本業の中に、いかに社会貢献を組み込んでいくかが問われると
    いいます。

日本を代表するグローバル企業「ユニクロ」がこれを実践しているそうです。

ユニクロはバングラデシュに合弁会社をつくり、 資材調達から販売まですべてを国内で行い、雇用を創出するだけではなくバングラデシュの貧困層でも購入できる1ドル程度の価格の洋服を生産すると宣言。http://www.uniqlo.com/jp/csr/socialbusiness/
柳井さんは「これまで主に先進国を対象にビジネスを広げてきたが、世界にはそれ以外の国に住む人々が約40億人いる。バングラデシュは将来性のある国。人々の生活をサポートし、世の中の役に立つソーシャルビジネスを開発することで、将来的に大きなビジネスになる。」
つまり、社会貢献をしながら、自分の成長戦略を実行しているわけです。

いまや社会貢献というのは実は、新しいビジネスを生み出す仕事であるべきなんですね。

量から質へ。個人の幸せから、絆の幸せへ。自分のためだけの消費ではなく、社会とつながるための消費へ。 自己犠牲ではなく、自己実現の姿勢。 希望を生み出し共有すること。

そんな時代の流れの中で、社会貢献というキーワードを改めて考えるべきタイミングにきていると思います。

参考:
社会貢献でメシを食う

2011年5月6日金曜日

【リアリティ、共感、ソーシャルグラフ】

前回までテレビを中心とするマスメディアからソーシャルメディア普及までの流れとそれに伴う変化についてをお話しました。今回は広告やマーケティングのあり方の変化についてです。

テレビ全盛の1990年代までは、マスマーケティングが有効に機能していました。マスメディアが発信する“これをもっていればセンスのいい人”、“こんな店に行くのはこんな感性をもった人”、“ここに住むのはおしゃれなこと”、、などの情報が説得力をもって伝わり、消費行動に結びついたわけです。(佐々木俊尚さん“キュレーションの時代”の中でこれを「記号消費」と紹介しています)

しかし2000年代に入ると、人々は画一的な情報に疑問を持ち始めます。インターネットの普及とともに、情報へのアクセスが容易になり、クチコミ評価サイト、レコメンド情報などで自分で納得できる判断ができるようになります。そうすると企業側も「とにかくこれです」という説得から「これがいいんじゃないでしょうか」、、という提案型に広告マーケティングの手法を徐々に変えていくことになります。消費者側に主導権が移り始めたわけですよね。

そして2010年代、ソーシャルメディアが力を増す中での消費は「共感」がキーワードになるといわれます。佐藤可士和さんは「クリエイティブシンキング」という本の中で、そんな共感を呼ぶもの、それは「リアリティ」だと言っています。「リサーチ」より「リアリティ」の重要性。「より本質的で現実の生活にフィットした感覚で、消費者の心を自然に捉えることが求められていると感じています。」、「企業から広告によってもたらされる情報にユーザーはリアリティを感じなくなってきました。それより信頼できる知り合いの評価、信頼できるコミュニティにおける口コミにリアリティを感じるようになってきていると感じます。」ということです。

これによってマーケティングの指標も変化していくと思われます。マスメディアの時代は、視聴率や発行部数などリーチが伝わることが主要指標でした。ネット検索時代に入ると情報が広く伝わったことが確認できるPV数やインプレッション数などが重視され、その対策の仕組みとしてSEO ( Search Engine Optimization 検索エンジン最適化)対策やリスティング対策などが重宝されるようになります。

しかし今後は、より強い共感、信頼を得ることが重視されてきます。そのためにソーシャルネットワーク上で情報をいかにして話題にさせるかが大事になる「ソーシャルグラフを意識したSGO( Social Graph Optimization ソーシャルグラフ最適化)が重要視されるようになるといわれています。

「ソーシャルグラフ」というのは狭義には人とひとのつながりの関係性のこと、広義には人と物への興味や関心度などを含む関係性を表すデータ。人と人、人と商品のクチコミをマッチングさせる人間関係図、信頼関係図です。(これを今、世界で一番保有している会社がフェースブックです)

広告の時代はマスが「広く告げる力」こそがマーケティングでした。しかし次世代の広告的な存在はソーシャルグラフを利用した「つながって共有する力」をつかったものになる可能性が高いといわれます。

mixiは2010年9月に「ソーシャルグラフ・プロバイダー」宣言をし、経営の中心に「ソーシャルグラフ」を据え、「ソーシャルコマース」を強化していきたいと言っているそうです。

------------------------------------------------------------------------------------------------
ちなみにマーケティングの法則もソーシャルメディア時代に変わっていくかも。

◆これまでのマーケティングの戦略
AIDAMA
 Attention注意>Interest関心>Desire欲求>Memory記憶>Action行動
AISAS
 Attention注意>Interest関心>Search検索>Action行動>Share共有

◆ソーシャルメディア時代のマーケティング戦略
SIPS
 Sympathize共感>Identify確認>Participate参加>Share & Spread共有・拡散
EAS
 Empathy共感>Action行動> Share共有

参考:
http://www.dentsu.co.jp/sips/index.html
ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本
佐藤可士和のクリエイティブシンキング
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)


.