前回までテレビを中心とするマスメディアからソーシャルメディア普及までの流れとそれに伴う変化についてをお話しました。今回は広告やマーケティングのあり方の変化についてです。
テレビ全盛の1990年代までは、マスマーケティングが有効に機能していました。マスメディアが発信する“これをもっていればセンスのいい人”、“こんな店に行くのはこんな感性をもった人”、“ここに住むのはおしゃれなこと”、、などの情報が説得力をもって伝わり、消費行動に結びついたわけです。(佐々木俊尚さん“キュレーションの時代”の中でこれを「記号消費」と紹介しています)
しかし2000年代に入ると、人々は画一的な情報に疑問を持ち始めます。インターネットの普及とともに、情報へのアクセスが容易になり、クチコミ評価サイト、レコメンド情報などで自分で納得できる判断ができるようになります。そうすると企業側も「とにかくこれです」という説得から「これがいいんじゃないでしょうか」、、という提案型に広告マーケティングの手法を徐々に変えていくことになります。消費者側に主導権が移り始めたわけですよね。
そして2010年代、ソーシャルメディアが力を増す中での消費は「共感」がキーワードになるといわれます。佐藤可士和さんは「クリエイティブシンキング」という本の中で、そんな共感を呼ぶもの、それは「リアリティ」だと言っています。「リサーチ」より「リアリティ」の重要性。「より本質的で現実の生活にフィットした感覚で、消費者の心を自然に捉えることが求められていると感じています。」、「企業から広告によってもたらされる情報にユーザーはリアリティを感じなくなってきました。それより信頼できる知り合いの評価、信頼できるコミュニティにおける口コミにリアリティを感じるようになってきていると感じます。」ということです。
これによってマーケティングの指標も変化していくと思われます。マスメディアの時代は、視聴率や発行部数などリーチが伝わることが主要指標でした。ネット検索時代に入ると情報が広く伝わったことが確認できるPV数やインプレッション数などが重視され、その対策の仕組みとしてSEO ( Search Engine Optimization 検索エンジン最適化)対策やリスティング対策などが重宝されるようになります。
しかし今後は、より強い共感、信頼を得ることが重視されてきます。そのためにソーシャルネットワーク上で情報をいかにして話題にさせるかが大事になる「ソーシャルグラフを意識したSGO( Social Graph Optimization ソーシャルグラフ最適化)が重要視されるようになるといわれています。
「ソーシャルグラフ」というのは狭義には人とひとのつながりの関係性のこと、広義には人と物への興味や関心度などを含む関係性を表すデータ。人と人、人と商品のクチコミをマッチングさせる人間関係図、信頼関係図です。(これを今、世界で一番保有している会社がフェースブックです)
広告の時代はマスが「広く告げる力」こそがマーケティングでした。しかし次世代の広告的な存在はソーシャルグラフを利用した「つながって共有する力」をつかったものになる可能性が高いといわれます。
mixiは2010年9月に「ソーシャルグラフ・プロバイダー」宣言をし、経営の中心に「ソーシャルグラフ」を据え、「ソーシャルコマース」を強化していきたいと言っているそうです。
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ちなみにマーケティングの法則もソーシャルメディア時代に変わっていくかも。
◆これまでのマーケティングの戦略
AIDAMA
Attention注意>Interest関心>Desire欲求>Memory記憶>Action行動
AISAS
Attention注意>Interest関心>Search検索>Action行動>Share共有
◆ソーシャルメディア時代のマーケティング戦略
SIPS
Sympathize共感>Identify確認>Participate参加>Share & Spread共有・拡散
EAS
Empathy共感>Action行動> Share共有
参考:
http://www.dentsu.co.jp/sips/index.html
ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本
佐藤可士和のクリエイティブシンキング
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
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