2014年6月5日木曜日

【たまにはメガトレンドも考えてみたい】

今週の日経ビジネスの特集は「デュポン~200年企業が見る未来」でした。メガトレンドを見据え、近視眼的ではなく大局的な戦略を打っている企業、デュポン。ドラッガーも言うとおり未来は、既に始まっている事実から推測することができます。その一つが人口動態です。世界の人口は2010年の約20億人から2020年には34億人、2050年には50億人に増加すると予想されています。食糧問題、エネルギー問題、そういった必ず問題となる課題に目を向けビジネスを構想していく。それが200年企業のデュポンだという話です。

そこまで大きなビジョンを描けないとしても我々が参考にすべき点はあります。例えば人口増加の話です。30億人に迫る勢いで増加する人口の過半数は実はアジア太平洋地域での増加です。経済成長を伴い人口が増えれば中間層や富裕層が出現します。

調査機関によるとアジアの中間所得者層は2010年の9億人から2020年には20億人へ。 中心は中国とインドです。そして富裕層も2010年の6000万人から2020年には2.3億人へ爆発的に増える予測です。

これは日本にとって大きなチャンスが広がっているということだと思う訳です。

何せアジアは日本カルチャーと親和性が高く、幸いなことに日本文化に関心を寄せてくれるアジアの方々は多く存在します。2020年には東京オリンピックもあります。コンテンツ戦略、メディア戦略を考える上でも、ここから2020年に向けてアジアも視野に入れた戦略を考えることが成長戦略にとって、すごく大事だと思います。

熱量をもつユーザーを引き寄せるコンテンツを考え、まず日本において、ユーザーを獲得する。そして、そのコミュニティをソーシャルやリアルで可視化していく。トレンドをつくり発信していく。それがうまくアジアにも市場開拓できれば、事業は今まで以上に大きく広がるのではないかと思う訳です。

高齢化で人口減少期に入る国内市場だけ考えていると悲観的になりがちですが、既に始まりつつある未来に目を向ければ大きな機会があるのではないかと考える訳です。


2014年6月1日日曜日

【スマホ普及とメディア構造変化の加速】

スマホ保有率がそろそろ6割をこえそうです。 博報堂DYが行っている定期調査によると2014年2月時点でスマホ保有率は58.1%とあります。中でも10代から20代の保有率は8~9割に達しているとのこと。(2010年5月のエントリーをみると、そのことスマホの保有率は男性6%、女性2%だったようです。それから、たった4年しかたっていないんですけどね。)


総務省が行ったインターネットへの依存傾向に関する調査によると都立高校生の6割が、1日に4時間以上インターネットを利用しているらしいです読売オンライン


また ニールセンの調査によるとスマホでネット利用者は直近1年で1100万人増加。特に伸長著しいのは20代から30代の女性とありました。

これらの大きな動きは当然、様々なビジネスに変化をもたらしていますよね。これまで紙媒体が担っていた役割がネット上のサービスやメディアに移行し始めています。

企業の動きも加速しているようです。角川とドワンゴが統合するというニュースもありました。「ネット娯楽の発信源に」なるべく、コンテンツとプラットフォームを一体化し、グローバルな競争に対抗していこうということでしょうか。

しかし角川ドワンゴほど根本的な変化をしようとする既存メディアはなかなかいません。だいたいは、既存の事業モデルをネットに移植するような対応に走りがちです。テレビ局が番組をネットでも配信するとかというのは本質的な対応にはならないように思うのです。

ここで難しいのは、今起こっている変化は、既存媒体上での方法論や事業モデルが通用しないことが多いことではないでしょうか。たとえば紙媒体とネット媒体では、求められるコンテンツの内容も品質も違うし、情報への対応の速さも違う。ネット上では豪華なセットでテレビショッピング番組をやらなくても、HIKAKINさんなどYOU TUBER一人が大きな影響力を及ぼすことができます。これは既存の媒体の構造では商売になりませんよね。
一方向的な既存メディアに対してネットメディアは多く、双方向的であったり、単にユーザーに場を提供するだけの場合だってあります。既存媒体側としては、自らを否定し、カニバリを起こすような戦略をとることはなかなかできません。

近頃 NYタイムズが「Innovation」と題する改革レポートを出しています。そこには破壊的イノベーションによって既存プレイヤーが主役から転落するロジックが解説されています。 たいがい競合となるイノベーターは既存プレイヤー以外の業界外部からやってきて、最初は安かろう、悪かろうのサービスから始まる。しかしテクノロジーの活用で徐々に品質をあげていき、どこかのポイントで、多くのユーザーが「十分満足できる品質」に至ったとき、既存プレイヤーは一気にポジションを奪われるという話です。
http://www.scribd.com/fullscreen/224608514?access_key=key-TiQrYKIlOq2iHdtIubdB&allow_share=true&escape=false&view_mode=scroll

これって、昔、アップルや韓国のサムソンなどを下にみていた日本の電機メーカーの姿とも重なりませんか。 既存の構造を残したまま変化への対応はできません。生き残る企業は、いちはやく旧来モデルに見切りをつけるはずです。これが遅れると治療が長引きます。日本の電機メーカーがそうであったようにです。
結局は未来を見据え、儲かっているうちに、賞味期限切れ間近の事業モデルからは撤退、転換していくことが近道なんですよね。未来はもう予想できる状況に至っている訳なのですからね。

参考)
博報堂DY「全国スマートフォンユーザー1000人定期調査」第9回分析結果報告
ニールセン、2013年度のネット利用動向を発表


2014年1月28日火曜日

【「ソリューション」vs「デマンド・クリエーション」】

事業のアプローチに大きく2つの方向性があるように思います。
課題解決型(ソリューション型)と需要創造型(デマンド・クリエーション型)です。
顧客の困っていることを聞いて、或いは潜在ニーズを発見して、それを解決して差し上げる。例えば

  • 家のクーラーの掃除をしたいが、自分でやるのは面倒だし徹底的にできない。だったらダスキンが専門的技術で請負いますよ、みたいな問題解決型サービス。
  • テレビがかさばるので、もっと薄くなればいいのに、、、液晶テレビなどの技術開発による問題解決。
  • 会社経理業務をもっと効率的にやりたい、、、この会計ソフトが全て解決しますよ、的なもの。
  • 夏はハラハラドキドキのホラー映画がみたいな、、、。ニーズを満たす作品を映画会社が制作。 
製造業でもサービス業でもソフト業でも同じです。マーケティングデータに基づくかどうかは別として世の中にある潜在、顕在のニーズ、ウォンツを察知して、或いは発見して。その需要を満たすモノコトを生み出したり既存の有り様を改善していく。これが課題解決型(ソリューション型)ではないかと思います。 無論これはこれで事業としてはアリです。日本の高度経済成長を支えたのも、大半はこの形でした。

しかしニーズがわかりやすく、知れ渡っているものであればあるほど、競争も激しくなり利益率も低下するでしょうし、そこを差別化するためのテクノロジーやクリエイティビティなどででしのぎをげずることになります。

更に移転可能なテクノロジーであれば、賃金の安いアジア地域へ付加価値は流れていってしまいます。 特に成熟した国内市場において、この事業が厳しいものになっていることは間違えありません。更にデジタル領域においては、グローバル競争にまきこまれ、フリーミアムなトレンドもあわせ従来型のやり方で利益を確保することは難しくなっています。

そこでチャレンジしたのが、需要創造型(デマンド・クリエーション型)の事業アプローチではないかと思う訳です。 「気づいていないニーズを発見する」を超えて、ニーズそのものをつくってしまうこと、世の中にトレンドを起こしてしまうことです。

ウォシュレットも一例だと思います。昔の記憶をたどればウォシュレットは世の中のニーズに応えた商品でなかったところからスタートしたハズです。世の中に、ライフスタイルを提案した訳です。今は当たり前になりつつあるウォシュレットの習慣も、技術的な課題というより、そういったニーズ自体を思いつくことができなかったがゆえ、ウォシュレットは存在しませんでした。 (新しい市場のつくりかた/三宅秀道 参照)

メディアが市場を創造するということもあります。田端信太郎さんの本やブログにヨガの事例が紹介されています。 1990年代、怪しげなイメージさえあったヨガについて2004年に『Yogini』という雑誌が枻出版から創刊されてヨガの「怪しい」「怖い」イメージは、アメリカ経由でのオシャレでヘルシーなイメージに一新されたとあります。『Yogini』のような女性向けのヨガ専門誌ができたことで、女性向けの健康法・美容法としての「ヨガ業界」が立ち上がったとも言えます。まさに需要を創造したと言えるのではないでしょうか。

 既に市場が存在する領域で、顧客のニーズ、ウォンツをとらえ問題解決をしていく志向では、競争にさらされなかなか大きな利益に結びつけることができません。一つ一つの請負業務を積み上げても単発のプロジェクトで終わりレバレッジをきかせた成長軌道になかなか載せられないのではないでしょうか。 自ら先頭にたって市場をつくりあげる、先頭に立つために勝てる領域に焦点を絞り込む、その範囲で影響力をもち様々な事業展開にも主導権を握る。単発のプロジェクトではなく、仕組みをつくる、事業をつくる。この志向こそが重要なのではないかと考える訳です。

 参照:メディア野郎のブートキャンプ
http://www.advertimes.com/20120227/article55494/

書籍:新しい市場のつくりかた 三宅秀道
 

2014年1月27日月曜日

【ゆでガエルにならない為に】

重大な環境変化にさらされても行動を変えることは難しいことの例えで「ゆでガエル」の話がよく使われます。かえるを熱湯に入れたら、熱くてすぐ飛び出すのに、水からゆっくりと温度をあげていくと、温度上昇に気づくのに遅れ茹だって死んでしまう、、という話。Wikiによれば「環境の変化に対応する事の重要性、困難性を指摘するために用いられる警句のひとつ」とありました。

ビジネスにおいて、「ゆでガエル現象」は頻繁に発生します。特に会社が歳をとってきたり社員の平均年齢が上がってくると環境変化への対応力が更に弱まっていきます。ゆっくりと進む変化によって自社のポジションがどんどん悪化し、価値が毀損されている状況があって、更にそれが致命的なレベルになることが確定的。よく考えればわかることなのに「なんとかなるだろう」と根拠なく思ってしまう。

人は変化することに対してストレスを感じるものだし、今までやってきたことを今まで通りにこなすことが一番楽。キャリアを重ねたりしていると、過去の成果に縛られて、今現在やっている仕事が未来への付加価値につながっているのか、という観点でモノゴトを捉えることが希薄化してしまいます。低い目標の達成でしかなくても成果が出ていれば、それでよし、疑問に思わなくなってしまう。

会社や事業が衰退に向かっていても、そのことに何となく気づいていたとしてもやはり変化は難しい。自分の責任じゃないし、、と考える。だから、むしろ駄目になる企業の末期ほど、会社に切迫感がないのではないかと思います。会社が破綻したとき、それをニュースで知った社員「まさかうちの会社が、、」ということもよくある話です。外から見ればそろそろ危ないということがささやかれていたとしても当人たちは大丈夫だろうと思ってしまう。いわゆる「正常化バイアス」というやつです。

では、ゆでガエルにならないように、危機を認識し、変化するためにはどうすればいいのでしょう。それを機能させる考え方の一つが「選択と集中」だと思うのです。

スティーブジョブズは選択と集中についてこう言っています。「集中というのは、集中すべきものに『イエス』と言うことではない。たくさんの優れたアイデアに『ノー』と言うことだ」と。

猫も杓子も「選択と集中」をすべきだと言います。でも、それで変われる会社は少ない。やることを決めることはできても、やめるべきこと、捨てるべきことを決められないからだと思います。徹底的にやらないといけません。ちょっとでも言い訳の余地を残すと人は「やるべきこと」より、得意な「やれること」を優先させてしまいます。

ナイキのCEOにジョブズがアドバイスしたと言われた次の言葉が徹底ぶりをあらわす象徴的な内容です。 「ナイキには世界最高の製品がいくつかある。だれもが絶対欲しいと思うような製品だ。その一方で、つまらない製品もたくさん作っている。つまらないモノは捨てて、優れた製品に集中するんだ。」

この徹底具合が重要なんです。

最近「ワン・シング 一点集中がもたらす驚きの効果」という書籍が出ています。「やるべき仕事は、常に「1つ」だけ。 大事な「1つのこと」を見つけ、そこに力を集中すれば、あとは、小さなドミノが次々と大きなドミノを倒していくように、目覚ましい成果がもたらされる。スティーヴ・ジョブズもビル・ゲイツも、すべての成功の秘訣はそこにあったのだ。」と説きます。

ゆでガエルにならない為に、変わることをDNAに組み込む、変わるために、賞味期限が過ぎた取り組みをすっぱり捨てていく。まずはその決断力、判断力こそが重要です。その上でリソースを情熱がもてて、強みがいかせる一点に集中させること。これを肝に銘じたいと思います。