2010年1月26日火曜日

【ソニーの大曽根語録】

経営には逆風がつきものです、メディア業界においても大手の地上波局、広告代理店などが苦しんでいる中で自分たちに何ができるのか、、と控えめ、後ろ向き、に考えるひともいるかもしれません。「時間が足りない」、「お金がない」、「クリエイティブ力が足らない」、「マーケティング機能がない」、「プレゼン力がない」、「分析力がない」、「マネジメント力が足りない」、「クライアントに入りこめていない」、、、などなど、できない理由は際限なく出せます。 

「もっと新しい技術や世の中を研究すべきだ」、「今の事業だけでは食っていけない」、「まだ、やり方はあるはず」、「そのやり方で勝ち目はあるんですか」、、など個人的見解や楽観的な期待、悲観的観測や他人事のような批評もいくらでもできます。

しかし重要なことはその次に続く問い 「So What?」です。
「だから、あなたは、どうすべきと考えているんですか」、「何を行動しているんですか」ということです。 意思と行動にしか価値はありません。それを集約して明確化することが重要です。「それは上の人が考えることだ、他部署のことは私には関係ない」、、という考えの方は成果をあげるのが難しいのではないかと思います。

先日NHKで「若者よ 心をぶつけろ~演出家・蜷川幸雄 格闘の記録」という番組をみました。蜷川さんが無名の若手俳優と劇団を作り、若者たちを追い詰め、厳しく指導し、旗揚げ公演に向けての真剣勝負に密着したドキュメンタリーです。 その中で、蜷川さんがパイプ椅子を投げつけて、若手に言った言葉が印象的でした。 「なんで売れているジャニーズのほうが、お前らより努力しているんだよ!」

どうすれば成果を獲得できるのかをつきつめて考えず、大事な行動を後回しにして、それでも疑問なく1年後も給料をいただけると考えているとすれば、相当の「大企業病」に蝕まれているかもしれません。 

■ソニーの大曽根語録

そんな中、ソニーでウォークマンやディスクマンの開発設計を指揮し、生産戦略の責任者としてソニーの全盛期を支え、ソニーの現場から慕われ、活気ある風土をつくったコアメンバーの大曽根さんの本が売っていたので読みました。

急ぎの仕事は忙しいヤツに頼め―ソニー元副社長・大曽根幸三の成功金言53 (角川SSC新書)

「会議を渡り歩いて仕事をした気になるな」、 「プロは乾いたタオルからでも水を絞る」、「やる気のあるヤツは可能性から発想するが、いくじのないヤツは不可能から発想する」、「ブレストは結論がでるまで帰るな」、「できないと言うなら、できるやつと変えるだけだ」、、、そんな大曽根語録が解説つきで書かれています。




←こんな人です。駄洒落好き。








我々はつきつめた議論をしているでしょうか? 無理だと思われていることをあきらめずに説得し、部下を励まし、まわりと協力し、しつこく議論し、めげずに頑張らなければ成果はでません。 「こんなもんでいいか」で人に感動を与えることも、共感を得ることもできません。

「出来ない理由や出来なかった言い訳をクドクド聞いても時間の無駄だ。あらかじめ言い訳集を用意して番号をつけておくから、言い訳があるなら番号で言え」。大曽根さん会議で使っていた「言い訳集」もその本にのっていました。

------------------------------------------------------------------------------------------
「大曽根語録」抜粋

●社内ニーズを吸い上げすぎてはヒットせず
諸品知識や現場を熟知しない上司は思いつきで勝手なことをいう。

●困難は可能なうち、不可能は割り切れ
できないことの議論は不毛。できることに集中し、解決策をもつけろ。

●プロは難しいことをわかりやすく説明する。
中途半端にしか理解していない素人の説明は聞くだけムダ。

●三日坊主は4日目には開き直る。
根性のない人間は、言い訳も多い。

●ヨットは逆風でも進む。
世間が不況だからって、なぜ自分たちまで不況だと
思わなければならないのか。

●絞った知恵だけ、付加価値が生まれる。
商品企画の際には、2日でも3日でもテーマについて徹底に
考えされることが重要だ。

できない理由は、できることの証明だ。
なぜできないか具体的な理由を浮き彫りにする。
ヒットは無理難題の賜物。

●目標は単純明快に。
いろんな機能がついていると一見便利なようだが、
かえって顧客層が絞れずに売れない。

プロは乾いたタオルからでも水を絞る。
素人が無理でも、プロには知識と経験がある。方法はある。

●急ぎの仕事は忙しいヤツに頼め。
優秀な人間に仕事が集まる。暇な人間は後でやろうとほっておく。

●小心者ほど言い訳がうまい。
気の小さな人間や本質をわきまえてない者ほど、よくしゃべる。

●やる気のあるものは可能性から発想する。執念のない者は
 不可能から発想する
できないやつには、その人を活かせる別のポストを探してやる。

●上司はファジーだと、部下はビジーになる。
定見がなく防波堤にならないから下がてんてこ舞いをする。

●部下は上司の思うとおりには育たず、上司のやるように育つ。
部下も子供も口で諭して育つなら苦労はない。上司の言うことは
聞かないがやることは、ちゃんと真似る。

●山より大きなイノシシなど出たためしはない。
先の心配ばかりしてもしょうがない。命をとられる訳ではない。
世の中、そんな大したことは起こりはしない。
選手を励ますネアカな監督こそ組織には必要。

ブレーンストーミングは目標達成までやれ。
具体的なテーマでブレストをやる。結論がでるまで帰らない。

●情報は意思決定できる人に与えよ。
アクションにつながらない情報提供は時間のムダにしかならない。

100回の講釈より1回の成功体験。
小さいことでいいから、ちゃんと目標を与え、達成する喜びを体験させれば部下は伸びる。

無理をしてでも良循環に入れ。
業績が悪化したときは、無理矢理にでも軌道修正して良循環に持ち込む。

他社の動きを気にするのは負けのはじまり。
ト ップを目指すべき。自信をもてるような努力をすべき。

信用は蟻の一穴から崩れていく。
つい見過ごしてしまう小さな部分が新しい発見にもつながるが、
とんでもない被害にも及ぶことがある。

.

2010年1月18日月曜日

【ロジックと戦略】

■「Twitter」

前回はTwitterについてお話しました。しかしTwitterは単なるツールです。それを活用するもしないも中身次第です。大学研究員や経営者、会社員、高校生などで数十万単位の”フォロー数”をもつ個人も多数存在します。企業だからといってユーザーが増える訳がありません。

危険なのはTwitterがはやっているから、とりあえずうちもそこで何かやっておこうか、、という考え方です。伝える中身と発信する個々人の情熱やクリエィティビティがなければ、寒いことになるのは目に見えています。

しかし、だからTwitterのことを知らなくていいということは話が違います。Twitterは単なる象徴です。メディア環境の変化を知らずしてビジネスはできないのではないかという話です。

前回もふれたとおり、10年ちょっと前には影も形もなかったGoogleやYouTubeやTwitterなどツールが急激に浸透しています。電波の希少性を前提に競争力を保ってきた放送モデルは崩壊しつつあります。

■「FREE」

週末「FREE」というビジネス本を読みましたAmazonランキング総合3位、ビジネス書で1位の本です。日曜の日経新聞の書評でも紹介されていました。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

いくらコンテンツホルダーが抵抗しようとも、デジタル化されたコンテンツはいずれ無料化の方向への圧力がかかってくる。そんな中で、どこからお金を生み出すモデルが考えられるのかという話が展開されています。現在の地上波デレビが無料モデルです。我々は視聴料をテレビ局に支払わない代わりに購入する商品の中で、テレビ視聴料を間接的に負担しています。もちろんGoogleにもお金を払ってません。しかしGoogleは莫大な利益を稼いでいます。どうしてでしょうか?

課金モデルや広告モデルだけがビジネスモデルではありません。どこで儲けるのか効率的なのか? ゴールドラッシュで確実に儲けたのは、金を掘った人ではなく、ジーンズメーカーなど周辺ビジネスでした。 海外アーティストの中では、CDをライブ興行のプロモーションツールと位置づける例もでています。1円パソコンはなぜ成立しているんでしょうか?

■ロジックと戦略がなければ収益化できない。

ロジックや戦略だけでは、「ヒットコンテンツ」は生まれません。「ヒットに方程式はない」という言葉もあります。コンテンツへの理解と愛情、情熱があって初めてヒットが生まれる可能性がでてきます。自分が信じなければ感動を人に与えることはできません。

しかし「ヒットコンテンツ」があったとしても、もはやロジックや戦略がなければそれをお金に換えることすらできなくなってきています。 「FREE」の中では有料コンテンツの終焉について、その理由が分析されています。現在、音楽を知る手段は多様化し、情報にお金を払う必要もありません。海外アーティストの今をTwitterで即時に知ることができます。そして新しい音楽を強く欲する若年層の人口が激減しています。そんな中で、もはや感性だけではビジネスにならない時代になりました。 そんな中でメディアの価値は何なのでしょうか? これを真剣に考える必要があります。

会議室の中だけでいくら議論しても、解決策はみつかりません。基本を知らずに、いくらブレストしても付加価値のある答えは出てこないかもしれません。見識ある人に話を聞きにいく必要があります。本を読む必要があります。新しい知識を勉強する必要があります。それらは、全て会社の外から獲得しなければいけません。 会社として感性を大事にしながらも、状況を分析し、ロジックを組み立てていくことが戦略として重要になっていると思います。

忙しく仕事をすること自体に価値はありません。何かを生み出し、世の中に影響を与えることが出発点です。

外海に乗り出す準備は進めないといけません。船に水漏れがあれば塞ぐ必要があります。エンジンがへたっているなら、まずそれを補強しなければいけません。考えることが面倒だから、とりあえず甲板掃除をしときます、というのはもう成立しないと感じております。


.

2010年1月7日木曜日

【メディア形態の質的変化】

2010年が始まりました。

ネット上では10年ちょっと前には概念すら存在しなかった様々な「メディア」が生まれています。BLOG、SNS、You Tube、Twitter、、、などなど。これらは質的な変化を伴いながらその影響力が飛躍的に高まっています。

端末もPCのみならず、i-PhoneやGoogleアンドロイド端末などが多機能化していきます。今後、更にネット対応化が進み、ネット上のメディアサービスや位置情報、個人情報などを相互リンクで活用しながらトータルとしての「メディア化」が進んでいくと思います。 そこではメディアの情報も個人の情報も同等同列に並べられます。当然、企業や政治、アーティストなど個人の広報宣伝手法も質的に変化してきています。

アメリカではオバマ大統領やCNNなどメディアがTwitterを始めて大きな影響を持っていたり、イラクの選挙など世界の情報はマスメディアよりTwitterのが早くなっている状況もあるようです。

日本でも新聞社や経営者、アーティストなどが”個人として”つぶやいています。鳩山首相もTwitterを始めました。今後テレビやライブ中継などでもTwitter的なひろがりと影響力は高まっていくことが予想されます。

http://response.jp/article/2010/01/06/134421.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0912/14/news073.html

そんな環境変化を見据えながら変化していく必要があるように思います

個々人の発信力への理解と実行もクロスファンクショナルに議論していくタイミングにきているのではないかと思います。朝日新聞や毎日新聞のTwitterでは、マスメディアらしからぬ個人的な「つぶやき」がかえって共感を呼ぶという事象があるようです。ソフトバンクの孫社長のTwitterをみると企業公式ではない気軽なコニュニケーションと人間がみえてきます。

企業のプロモーション手法も変化していく中で、メディアとして、どういうポジショニングをし、何を武器にして、どう貢献を果たして行くのか/行けるのかを考えないといけないタイミングがきたように感じます。「難しいことは、おいておいて、とにかくコンテンツを制作する、広告出稿する、、」ということだけを考えていては、いよいよ機能しなくなっていくように思います。コンテンツや思いをどう伝播させていくのか。