2011年5月24日火曜日

【プラットフォームとモジュールの話】

IT用語として使われてきたプラットフォームとかモジュールとかいう言葉がビジネス全般において使われるようになってきました。先日、あるイベントで佐々木俊尚さんのお話を聞く機会に、この「プラットフォームとモジュール」が一つのビジネス上のキーワードになっていました。メディアビジネスにおいても、このプラットフォームとどう向き合い、活用するかということが重要になってきていると思います。

◆プラットフォーム
そもそもプラットフォームって何か?調べると「コンピュータにおいて、ソフトウェアが動作するための土台(基盤)として機能する部分のこと」と書いてあります。例えばExcelやWordというアプリケーションはWindowsなどのプラットフォーム上で動いていると言えますよね。

しかしプラットフォームはあらゆるビジネス事象で頻繁に使われる言葉になりました。自動車産業においては最も基本となるシャシー部分がプラットフォームで、そこから部品やモジュールを組み合わせていろんな車種を作り出しています。AndroidはスマートフォンやタブレットPCなどターゲットとして開発されたプラットフォームだし、YouTubeは動画配信のプラットフォームです。

少し前まで放送や新聞などのメディアビジネスはこういったプラットフォーム的な考え方とは別の垂直統合型のビジネスモデルで栄えてきました。自ら番組や記事といったコンテンツをつくり、紙面や番組表として編成し、電波を流す鉄塔や新聞販売店などの流通までを一気通貫で抱えてトータルで収益を確保していた訳ですよね。

しかし放送においてはかなり前から配信、課金、マーケティングとしてスカパーのようなプラットフォームが成立し垂直統合型ではない形が存在し始めました。映像コンテンツはテレビでなくてもYouTubeやUstreamという配信プラットフォーム上で見ることができるようになりました。

ニュースについても今や新聞をとらなくてもyahooニュースやGoogleでも知ることができます。ケータイの世界でも少し前までキャリア毎にがi-modeやez webなどでサービスやコンテンツ、課金インフラを支配していました。しかし今やキャリア共通のAndroidやiTunesというプラットフォーム上でアプリが動き課金ができる環境が整備されつつあります。

SNSの世界でもTwitterやFacebookを始めとしたプレイヤーがプラットフォーム化しています。Twitterのつながりを前提としてfoursquareという位置情報サービスが成立したり、Facebookを前提としてソーシャルアプリ、ソーシャルゲームなどが次々と生まれています。

つまり、一昔前のコンテンツから伝送路までを一気通貫で抱えてユーザーを囲い込むクローズな垂直統合型のモデルの多くは崩壊し始め、オープンなプラットフォームを活用した新しいビジネス形態が増えつつあるということだと思います。

そして、このプラットフォームのトレンドがオープン化とグローバル化だと思います。AndroidもTwitterもFacebookもYouTubeもUstreamも、全て全世界で共通に普及したプラットフォームで、基本的に無償でオープンに解放しています。

これからのメディアビジネスは、きっとこういったオープングローバルプラットフォーム上で、どういう付加価値を提供できるかというところに競争ルールがシフトしていくトレンドだと思います。

◆モジュール
そこで出てくるのがモジュールです。モジュールとは「ハードウェアやソフトウェアにおける、ひとまとまりの機能・要素のことである」と書かれています。FacebookやMixiなどをプラットフォームにして、そこでサードパーティの開発者が提供するアプリやゲームはモジュールと呼べます。アメリカの音楽業界はYouTubeと争うことをやめてYouTubeプラットフォームにしてVEVOというミュージックビデオ配信サービスを開始。これもモジュールです。

コンテンツ制作から流通までを押さえることによって成立していた垂直統合型のビジネスは、オープングローバルプラットフォーム化で収益性を損うことになっていくと想像します。

音楽業界でいえば、楽曲を制作し、CDに固定化し、販売流通網を押さえることによって獲得してきた付加価値の総体が解体され始めます。既にCDの部分がデータ化され、流通網はインターネット、iTunesなどのプラットフォームに押さえられつつあります。
放送も新聞も音楽も、どこの業界も自らネット上でも流通網を確保する動きをとっていますが、オープングローバルプラットフォームの勢いの中で、どこまで独自の領地を確保できるのかは難しい状況に至る可能性があります。


佐々木俊尚さんも言ってましたが、今後、メディアビジネスで新たなビジネスチャンスを探るとき、オープングローバルプラットフォームをうまく活用して、他がまねできないモジュールとして付加価値を出していくことが、一つの生き方であると思います。 
従来のように、無闇に大きく儲けることは困難になる可能性があります。どっかに関所をつくって過度に儲けることはできなくなるということかもしれません。でも食っていけるやり方はあると僕は思います。ここらへん、また考えていきます。


参考)
http://www.facebook.com/SAKAIjyuku
http://blog.goo.ne.jp/denmipapa/e/151665a33282b74ef03e854eaba959f7?fm=rss
http://khayashida.jugem.jp/?eid=150
http://ja.wikipedia.org/wiki/VEVO