2011年5月10日火曜日

【企業にとっての社会貢献】

震災のことがあって、日本においても「社会貢献のあり方」ということが、より現実的で緊急な問題となっています。しかし、社会貢献意識の高まり自体は、震災前からありました。それがより加速されたということではないかと思います。

企業にとってもビジョンやミッションを考える上で、社会に対してどういう貢献をするのか、という基本理念がなければ戦略に軸がうまれません。そういった観点からも、企業が社会貢献をどう考えるのかは重要な課題だと思います。

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世界に目を向けると、もっと大きな流れとして社会貢献が位置づけられています。アメリカでは、2010年大学生の就職人気ランキングで、NPOが一位になったそうです。(TFA)Teach for Americaというところです。GoogleやAppleを差し置いての一位。 http://www.teachforamerica.org/
Room to Readを設立したジョンウッドはマイクロソフトの重役を引退し、NPOに心血を注ぎ、スタバの店舗展開を超えるスピードで図書館や教育機関を途上国に展開しているそうです。http://www.roomtoread.jp/

世の中には多くの社会問題があります。今現在、進行中の日本で震災によって引き起こされたあらゆる問題ももちろん、世界中で治安、失業、貧困、環境、教育、いじめなど社会問題が発生してます。それぞれ解決が急を要することばかりです。
これをなんとかしたい、問題を解決していきたい、、そのために実際に行動し、ソーシャルイノベーションを起こす、「世界を変える」ということを実行し成果を出している人や団体があるということです。 (社会貢献によって)世界を変えるということは、もはや夢想家のスローガンではなく、現実的な確信となっているといいます。

2009年調査によると日本の高校生の86%が「この国には希望がない」と感じていると答えたそうです。  村上龍さんは小説の中で「この国には何でもある。本当にいろいろなものがある。だが、希望だけがない」と書いていました。 そして希望とは「将来が現在より良いものになるだろう、そういった確信に近い思いが希望だ」といっています。「これまで日本は希望より安心を優先されてきた」。でも震災を契機に、これから日本がどう変わっていけるかが問われていると思います。
社会貢献とは希望を生み出す仕事ということかもしれません。

利益の概念も変わりつつあるようです。 これまでは利益とはお金のことでした。でも最近は「社会的利益」という考え方がでてきて、何か事業を行ったことで、たとえ金銭的な利益がでなくても、それで世の中がよくなれば社会的利益が出たという考え方も出てきています。

じゃあ社会貢献すれば儲けなくてもいいのか? それも全く違います。著名な学者マイケルポーターは「社会貢献したほうが企業は儲かる」と断言しました。 社会貢献したほうが社員のモチベーションが上がることも結論づけられています。いまやマーケティング戦略さえも社会貢献と無関係ではいられない時代です。

更に企業による社会貢献は大きく考え方が進化しています。

・その昔、企業による社会貢献は「慈善の時代」でした。企業に求めら
れていたのはNPOへの寄付。カネを出すだけ。
・これが「本業を通じた、本業を活かした貢献の時代」に移ります。
商品を売る行為に寄付を組み込んだ仕組みとか電通のクリエイターが
パンフづくりを指導するとか、IT技術者がソーシャルメディアの活用法
を    コンサルするとか。
・そして今は「本業と社会貢献が統合する時代」に入りました。これから
の企業は本業の中に、いかに社会貢献を組み込んでいくかが問われると
    いいます。

日本を代表するグローバル企業「ユニクロ」がこれを実践しているそうです。

ユニクロはバングラデシュに合弁会社をつくり、 資材調達から販売まですべてを国内で行い、雇用を創出するだけではなくバングラデシュの貧困層でも購入できる1ドル程度の価格の洋服を生産すると宣言。http://www.uniqlo.com/jp/csr/socialbusiness/
柳井さんは「これまで主に先進国を対象にビジネスを広げてきたが、世界にはそれ以外の国に住む人々が約40億人いる。バングラデシュは将来性のある国。人々の生活をサポートし、世の中の役に立つソーシャルビジネスを開発することで、将来的に大きなビジネスになる。」
つまり、社会貢献をしながら、自分の成長戦略を実行しているわけです。

いまや社会貢献というのは実は、新しいビジネスを生み出す仕事であるべきなんですね。

量から質へ。個人の幸せから、絆の幸せへ。自分のためだけの消費ではなく、社会とつながるための消費へ。 自己犠牲ではなく、自己実現の姿勢。 希望を生み出し共有すること。

そんな時代の流れの中で、社会貢献というキーワードを改めて考えるべきタイミングにきていると思います。

参考:
社会貢献でメシを食う