2012年4月16日月曜日

【「コモディティ化という怪物」と「依存性ビジネスの猛威」】

ニュースによればテレビ依存の家電メーカーの2012年度決算は巨額赤字の壊滅状態のようです。家電の世界では最新テクノロジーの高品質な商品を売り出しても投資コストに見合う価格では売れなくなっているんですね。中の人が革新的だと思うことも世間はちょっとした改善ぐらいしか捉えてくれません。コモディティ化っていう怪物のせいらしいです。
コモディティ化とは「商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとってはどの商品も大差がなくなってしまう状態」。差別化不能に陥った商品は競争原理で価格下落。利幅が減って企業収益が圧迫されるという構造です。
その昔、ソニーの出井さんは、隕石によって絶滅した恐竜の例えで、コモディティ化への危機感を煽りましたが、結局、その通りになってしまった訳ですね。

一方で、現在、猛威を振るっている羽振りがいいビジネスも存在します。そんなビジネスの共通点の一つが人の依存性をうまく取り込んでいるということ。

ちなみに、そんな「依存性」には3っぐらい種類があるようです。まず「物質依存」。タバコやアルコール、薬物という身体への取り込みによって常習性が生まれやめられなくなるたつです。次に「行為依存」。買い物、収集、ネットゲーム、ギャンブル、仕事などそれをやっていないと不安になる、やることで快感を得たいというやつ。そして「関係依存」。家族や恋愛などで自己確認をしないではいられない、満足感を得たいというやつです。


心の安心や肉体の満足を求めたい、それをできるだけ安易に労力をかけずに得たい。そして最初はちょっとのつもりが依存の対象から離れられなくなる。意志がコントロールできなくなる。次第に人間関係や金銭面にまで支障をきたすことがある。これが依存です。生活費を削ってでもお金を使う人がいる。そのモデルの強力性がゆえに国が規制したり怖い人が介入したりする訳ですよね。

不況とはいえ昨今の日本において貧窮で飢え死にというのはよほどの事情のレアケース。でも基本の衣食住が満たされても欠乏感がある、不安感が解消できない、更なる満足を得たい。そんな欲求欲望に対して街中に依存型コンテンツや依存ビジネスへの誘因情報があふれている訳です。いつもテレビショッピングをやっている衛星放送とかみると、それで成立しているってことはきっと儲かっているんですね。パチンコ、ネットゲーム。韓流ドラマにアイドル、高級ブランド。お金を使うという手段によって達成感や満足感や自己確認、ストレス発散をする人から大きな利潤をあげている訳です。あげくにそんな方面でお金を使いすぎた人のための消費者金融や借金を整理したい人のための法律事務所のCM。そういうところでぐるぐるお金は巡っているように思えます。

テクノロジーがどんなに素晴らしくてもコモディティ化することもあります。プレステのハイスペックマシンよりGREEのガラケー向けソーシャルゲームのが儲かる状況が示している通りです。市場の競争原理が変わっているということなのかもしれません。

社会に対して生産的でない依存性ビジネスが大きな利益を生んでいるのは、ちょっと寂しい感じもしますし、国力も低下しちゃいそうです。でもそういったプレイヤーはユーザーに対してよくも悪くも「これじゃないと駄目だ、これがないと満足できないという」サービスを提供していることは事実です。
このクリエイティビティをうまく社会的付加価値のあるほうにもっていけたらいいとな思う訳です。もはや代替不可能なモノやサービスはテクノロジーではなくクリエイティビティからしか生まれない世の中になっているということなんでしょうから。

(参考)

Chikirinの日記:依存性ビジネスの猛威