アメリカでは経済危機を境に、借金をしてまで消費するような購買層は影を潜め、「消費をとおして自分の理念に合った信頼できる企業を応援し、地域社会を大切にしながら生きよう」という意識変化が起きているということです。宣伝に踊らされて、利己的にお金を使うのではなく、希少な「購買力」を「投票権」のように行使して、社会に希望をもたらし、人の絆を強めるようなモノやサービスを支援する。有名企業でなくても信頼できる企業から買う。
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この「スペンド・シフト」のトレンドは、きっと日本においても震災を契機にして、これから加速してくると思ったりします。今の日本の危機的な状況の中で、企業がどのように考え、どんな動きをしているのかも、消費者はちゃんと見ていると思うんです。
そして昨今、いくつかの事例を見聞きする中で、この「スペンド・シフト」、実は日本の若い世代にとっては、既に当たり前に感じている人も多いのではないかと再認識しました。今の20代ぐらいからみると、マスに踊らされて大量消費を行い続けてきた、上の世代のほうが理解不能なのかもしれません。
先般、有料放送市場の市場調査に関わっている方とお話する機会がありました。現在、有料多チャンネル放送は1000万世帯を超えるまでに成長しましたが、昨今は市場の伸びが鈍化し、先行き不透明感も増しています。一つの問題は新しい若い層を獲得できていないことです。そもそもテレビ離れした若者が、これから、何かのきっかけでテレビに戻ってくるのだろうか。
そんな中、若者を集めたグループインタビューを行い、その様子を見学して驚いたという話がありました。いわく「今の20代の若者達は世間からニートだ、ゆとりだ、オタクだ、草食系だのなんだの言われているが、いやいや、ちゃんと自分の意見をもってますよ」、「親の世代からしてバブル後の社会人生活で、本人達は生まれてこのかた不況しか経験していない、そんな彼らは消費に対しても自分の考えを持ってシビアに行っていることを再認識しましたよ」ということでした。
そもそも多チャンネル放送の魅力は、その多様性にあります。40チャンネル、いろいろ見れて4千円!お得でしょ、っていうセット売りのビジネスモデルです。しかし、今の若者にとっては、”テレビで何十チャンネルも見る事ができる”事自体に、何の驚きもありません。そりゃそうです。HDDレコーダーもあるし、YouTubeもニコ動もあります。
更に、彼らにとっては”見ないチャンネルの分まで、なぜお金を払わなければいけないか意味がわからない”ということです。見たいチャンネル一つが1,000円で、それが4っで4,000円ならまだ分かるけど。
自分が付加価値があると判断するものに対してはお金を払う、それ以外は払わない。金額の多寡の問題ではないんです。
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そして、これから、自分にとってだけの価値だけでなく、自分の消費が社会に対して、どのように貢献するのか、それが重要なポイントになってくると思います。テレビのイメージ訴求や機能訴求の広告宣伝テクニックだけでは消費者は選択してくれない、伝わらない世の中に入ったと思う訳です。
震災の緊急事態の中で、普段からの企業の志が本物かどうかも試されました。一つ感動的な事例としては、糸井さんの”ほぼ日”で連載されている「クロネコヤマトのDNA」の話があります。こういう話を聞くと、宅配便を頼むならクロネコヤマトだな、って思いが沸いてきます。こういう「スペンド・シフト」な流れが、モノやサービス、音楽などのエンターテイメントにも波及していくのではないかと思います。
被災地のなかを進む、一台のトラック。
(参考)
◆ほぼ日刊イトイ新聞「クロネコヤマトのDNA」http://www.1101.com/yamato/
荷台には「クール宅急便」の文字が見て取れます。
「すごいな‥‥すごい写真ですね‥‥
このドライバーは一生この景色を忘れないだろうね」
http://www.1101.com/yamato/2011-08-17.html
「すごいな‥‥すごい写真ですね‥‥
このドライバーは一生この景色を忘れないだろうね」
http://www.1101.com/yamato/2011-08-17.html
◆若者の気持ちを代弁!スペンド・シフト
http://kuwako-lab.com/wordpress/?p=4052
http://ameblo.jp/jonetu/entry-10979122004.html
◆スペンドシフトは日本のレジャーでも起きている