前回は、人や組織の意識や行動を変えていくために、まず人の置かれた環境から変えてしまうという方法論の話をしました。 うまくいっているかのごとく振る舞い、うまくいっているような環境をつくり、うまくいっているケースの表面的なことから真似てしまうというのも有効な手立てだよね、ということです。
関連した有名な話で「割れ窓理論」というのを知っているでしょうか?
Wikiによれば「割れ窓理論」とは、、
『軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できるとする理論。犯罪学者ケリングが考案。 「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」との考え方からこの名がある。』 というものです。
ニューヨーク市がこの理論を採用して成功させた治安対策の話があります。1994年にジュリアーニ市長は、ケリングを雇い、この理論を徹底的に実践しました。 結果、5年間で殺人事件の発生は60%以上減少し、年間60万件あった重罪事件の発生は半減しました。これは通常では考えにくい変化でした。
この変化の要因について麻薬取引の衰退や住民の高齢化、雇用率の改善など社会問題の変化を指摘する人もいましたが、そういった変化は別にニューヨークだけに起こっている変化ではなく、ニューヨーク市だけが、なぜ飛びぬけて犯罪の減少に成功したかの説明にはなっていませんでした。
じゃあ、ジュリアーニやケリングは何をしたのか。
まず行ったのは荒れた地下鉄に特化した徹底的な浄化作戦でした。ケリングは「地下鉄の汚れや落書きは地下鉄崩壊の象徴だ」と主張し、予算を確保し、偏執的なまでに地下鉄の落書きをなくす対策をとりました。 地下鉄の折り返し場所に洗浄基地を儲け、その場で落書きを消すか、できなければ、その車両をはずすぐらいの徹底さで取り組みました。 公共物破壊者達への有無を言わせぬメッセージをあらわした訳です。
次に市が地下鉄の重罪事件を撲滅するために行ったのは、無賃乗車の撲滅でした。落書きと同じように、無賃乗車こそが、無秩序の象徴である小さなしるしだと捉え、一見して的外れとも思える軽犯罪の検挙を徹底したということです。当初、警察も軽犯罪に対して人手とお金をかけるのは効率的でないと主張しましたが、軽犯罪や泥酔など迷惑行為を徹底的に取り締まり、連行していくうちに、重罪容疑者や武器所持などが次々とつかまるという副産物もうまれました。
ニューヨーク市は、一見して取るに足らない生活環境犯罪の取り締まりを徹底し、凶悪犯罪激減につなげたということです。
組織風土や職場環境を根本問題解決するのために何をしなければいけないか。割れ窓理論はヒントになると考えます。「~を改善しよう」といくら、あいまいなお題目をあげてみても実効性が伴うとは思えません。そうではなく、問題を象徴している”小さなしるし”を見つけ出し、個別具体的な指示を徹底して行うことが有効な方法論だと考えます。前回ご紹介した川上監督はトイレのスリッパをそろえることにチームワークの乱れの“しるし”を見出したということですよね。
会社においても、オフィスや会議室の乱れ、会議への遅刻、内職などを見過ごしていると、それが組織風土の悪循環になってしまいかねません。こういう”しるし”を見逃さず、上位者が率先して徹底した改善を行っていくことが風土の改善の第一歩だと考えます。 そんなことは、たいしたことではない、若いやつがやっておけ、、という考え方こそが、割れ窓として無秩序を生む土壌になると考えます。
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